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余命10年のcalinkolincaのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
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今日は「余命10年」を。
よくある余命僅かな人を「かわいそうな人」にして同情を買うお涙頂戴ものとは一線を画す素敵なラブストーリーでした。

ふたりの出会いも「余命10年」と宣告され、仕事につくことができず、夢見ていた未来と違う今に苛立つ女性と、生きることに希望を見いだせず自殺未遂をしてしまう正反対のふたりの衝突から始まり、思うように人生を歩めないふたりが惹かれ合う理由が必然的に描かれていて、とても良かった。
不器用だけど、人生に真摯に向き合うふたりは正反対だけど似たもの同士だったから。

余命が10年しかないとわかっているからこそ、和人の思いに応えることができない茉莉の苦しみと、中学生時代から茉莉に憧れていて、茉莉が好きで好きでたまらないのに応えてもらえない和人の苦しみ。どちらもわかるからこそ、ふたりに幸せになって欲しいと強く願った。
だから、お互いがお互いの生きる意味となり、ふたりが結ばれたときには涙が頬を伝った。

そして、この作品のもうひとつの主役は長いような短いような10年を彩る、桜、花火、紅葉、雪景色。移ろいゆく四季の映像も美しく、そこにこの世界を「生きる」ことの輝きが表現されているように感じました。
結ばれた茉莉と和人がそんな世界を愛おしむように、慈しむように生き抜く姿は、とても美しかった。幸せそうなふたりを、ずっと見ていたかった。

演者さんも皆素晴らしく、理不尽な運命に時に怒り、泣き、生への渇望にもがき苦しむ茉莉の10年を演じきった小松菜奈さん、茉莉の姉役の黒木華さん、茉莉の友人役の奈緒さん、茉莉と和人の友人役の山田裕貴さん、茉莉の両親役の松重豊さんと原日出子さんと脇を固めた布陣も良かったけれど特に、和人役の坂口健太郎さんは不器用だけれど一途な青年がやがて頼りがいのあるひとりの青年に成長を演じきり、私は彼に何度もキュンキュンしてしまった。個人的には今までに観た坂口健太郎の演技で一番良かったと思う。
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