しらす

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版のしらすのレビュー・感想・評価

4.0
バトーの中に押井守がいる!
ネットがより身近になった今こそ
IMAXで攻殻を観よう!
押井守監督

「GHOST IN THE SHELL /
          攻殻機動隊」

所謂、第2の攻殻と言われる押井守版のIMAX4K上映。
士郎正宗の原作(第1の攻殻)が連載されたのが1989年。
押井版の今作が公開されたのが1995年。
それから神山監督版のSAC、黄瀬監督のARISE、ハリウッドのスカヨハ版。
そして今Netflixでもアニメをやっているという‥30年以上に渡り、広がり続ける日本のSFコンテンツが攻殻という作品。

そんな中、世界的に1番イメージされている攻殻が今作、押井版だと思います。良くも悪くも士郎正宗さんの原作と大きく乖離した作品で‥ 押井さんの作家性が全面に出た形になった作品です。

士郎正宗さんの原作との違いは、発表の年代の違いもあると思います。まだバブル経済前夜でノリノリだったころの日本人マインドがある原作に比べ、押井版は1995年。
バブル崩壊、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件‥など未来への希望に陰りが見え出した年です。

押井さんの作家性たる最大の所以がバトーの視点でしょう。
パトレイバーの後藤隊長だったりね、こういう相棒的な強い女性に惹かれながらも、一歩踏み出せない忠犬おじさんをやらせれば本当に天下一品ですね!もう性癖と言っていいと思うんですが。

バトーの少佐に対する思いっていうのが、やっぱりこの映画のミソで。
バトーは失いたくないと願っているんですよね。肉体と精神を。
でも大好きな少佐は肉体も精神も失って、新しい境地に向かおうとする!っていう
壮大な片想いの話でもあります。

何度も劇中で言われる“ゴースト“というものに何も説明がなくて初見では混乱するかもしれません。1番近い意味合いは魂なのかな。
元ネタは哲学者デカルトを批判的に論じたギルバート・ライルのゴースト・イン・ザ・マシーンから来てます。
脳がなくても心はあるという考え方に対しての皮肉としてね。
まさにバトーだよね。

だから、彼女がインスタとかTikTokに夢中で魂ここにあらずの状態を嘆く彼氏みたいな感じかな。
現代的な解釈すると(強引ですが)
「もぉとぉこぉぉぉ!」
バトーの叫びは本当に心に刺さります。
2人の行く末は続編のイノセンスへ。

アクションも90年代特有のリアル系の作画が素晴らしいです。
現代のアニメーションのアクションがエフェクトとアクロバットな動きで魅せるのに比べて、重量感のあるズッシリした作画!
特に銃撃描写の細やかさなんて!
眼福。
いまだに銃器マニアの間で語り継がれる凄まじい描写です!
しらす

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