くもすけ

ドーナツキングのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

ドーナツキング(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

カリフォルニアに2.5万店あるドーナツ店のうち個人商店5千店の九割はカンボジア系が経営している。不思議に思った中国系の監督が店員に話を聞くうち一人の男にたどりつく。

■難民
その男はテッド・ンゴイことBun Tek Ngoy。彼の母も広東省から逃れてきた移民でカンボジア語が話せず、重労働で子供を養ったそうだ。テッドはプノンペンの大学で学び同級生で未来の妻と知り合う。この夜這いの話や義父を通じて軍の少佐に上り詰めるあたりにも、バイタリティを感じる。

1975年内戦から逃れて妻、3人の幼い子供、2人のいとこ、甥と一緒に米国へ。当時アメリカはニクソン失脚、ヴェトナム撤退で潮目が変わりつつあった。フォード大統領の難民支援法でカリフォリニアにペンドルトンキャンプ(カリフォルニア南部にある軍事基地)をつくり、5万人のカンボジア人を難民として受け入れていた。

キャンプの生活は簡易的なもので食事には苦労させられたようだ。ここから出るのには後見人が必要で、牧師を頼って様々な職につき昼夜なく働く。

■カリフォルニアのドーナツ興亡史
50年代にハイウェイが発達し、移動食用にテイクアウトの需要が増えていた。ドーナツ店はダンキンが東海岸を、ウィンチェルが西海岸を抑えていた。テッドはウィンチェルで下積みし独立を果たす。

ピンクの箱は白よりも安かった、という単純な理由。マーセラスもクーパー捜査官も食べてたとは。

アジア系がほとんどいなかったらしく偏見として、ティファニー、すてきな片想い、のアジア人役などが引用されてる。
難民キャンプでは語学その他のプログラムもあったようだが、店に立った妻クリスティも挨拶くらいしかわからずジェスチャーでやりとりしていた、と。

全くの新天地で新たな神を信じて名前も変えて、というのはどんなものか想像ができない。それでも家族総出がむしゃらに働けば貧しさを抜け出せる時代だったと。85年テッドは50以上の店舗を持ちドーナツ王の異名を取った。
後半米流の教育を受けた第二、三世代の活躍が語られる。難民パワーを前に一度は撤退したダンキンが再上陸し、また別の時代に入ったことを実感する。

■その後
ギャンブル依存症の更生プログラムと寺院への入院をするが効き目はなかったようで、資産を使い果たして破産する。

テッドは93年国連監視下のカンボジア王国が発足するのを見て帰国する。米在住時代から熱心な共和党員で、歴代の大統領と撮った写真が並べられていたが、帰国して祖国再建のため政治の世界に入ろうとしていたようだ。
共和党を結党し選挙では失敗するもポル・ポト時代からの大物フン・センの知己を得る。結局その後の選挙に失敗して政治から足を洗い、05年新妻と子供を置いてLAに飛ぶが、無一文で友人のトレーラーハウス暮らし。その後再び帰国しプノンペンで不動産で生計立てているようだ。好々爺然として皆から温かく迎えられていたが、まだ何かやってくれそうな