恐らく日本国内でのソフト化が前後したせいで、『人肉饅頭』を彷彿とさせる邦題が付いたのだろうが、原題は『ドクター・ラム』。
前年に『Silence of Lamb』が公開されているので無理矢理なパクリなのかと思ったがさにあらず、香港に実在したシリアル・キラー林過雲(ラム・コーワン)を題材に取ったホラーサスペンスとなっている。
そういえば霊障のない香港ホラーはあまり観たことがないので、本作はどのような演出なのかと思ったらヘヴィでグロい回想形式、香港人の暗黒面が垣間見える。
林は家族と同居する自宅で人体をバラバラにしていたというのだから驚くが、本作の当該場面は結構長く、血飛沫や内臓が室内に飛び散り、インコを赤く染める描写まであった。
また解剖や死姦を自撮りする描写も、事実ベースというのだから酷い。
さらに軍事政権時代の韓国も真っ青、といった趣の暴力的取り調べ場面に呆然…。
しかしコメディ演出をどうしても挿入したがる香港映画の性(さが)も健在、ゲロが止まらない女性刑事は滑稽で、特に笑える。
若きサイモン・ヤムがサイコ役に挑んでいるのも鑑賞理由のひとつだったが、ただでさえ難役なのに「土砂降りの中、タクシー車内で犯行に及ぶ様子を、車窓越しに捉えようとする」など撮影が凝っているせいか、演技がいまひとつ真に迫っておらず、狂気を滲ませるまでには至らず。
被害者役を演じた無名女優陣の、ヤケクソ気味な奮闘の方が印象に残った。
本作で警部役のダニエル・リーは共同で監督を担当。
船越英一郎に似た風貌で、動く姿にはアジョシの色気がムンムン漂う。