ノラネコの呑んで観るシネマ

イノセンツのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.6
夏休みに出会った、同じ団地に住む四人の子供。
四人が持つ特殊な能力は共鳴し合い、増大してゆく。
やがて、彼らのうち一人が暴走をはじめると、静かなるサイキックウォーズの幕が開く。
非常にウェルメイドな北欧スリラー。
監督・脚本のエスキル・フォクトは、大友克洋の「童夢」にインスパイアされて本作を作ったそう。
もちろんストーリー自体はオリジナルなのだが、子供、団地、知的障害者、心を病んだ親など要素は極めてよく似ている。
特にクライマックスの緊張感あふれる超能力バトルは、ほぼ「童夢」そのままだ。
最大の違いは、老人が登場せず、四人の子供たちの中だけで展開する話になっていることで、この辺りはむしろ「クロニクル」に近い構造。
主人公の少女は、序盤では障害を持つ姉を疎ましく思っていて、親の見ていないところで意地悪をする非共感キャラで、仲間の能力によって徐々に姉の隠された心を知る。
そして共通の敵を前に、初めて本当の姉妹となる成長物語に仕上げている。
「童夢」の団地崩壊のようなスペクタクル性は無いが、あの漫画の独特のムードをよくここまで忠実に再現したものだ。
インスパイア元を換骨奪胎し、独自性も高い秀作。
ブログ記事:
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