コマミー

イノセンツのコマミーのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.0
【目覚める能力と心の闇】




「テルマ」「わたしは最悪」と言った"ヨアヒム・トリアー"作品の脚本家として知られる"エスキル・フォクト"。本作はそんな彼の第二作目の"監督作"であり、ノルウェーのアカデミー賞である"アマンダ賞"で四冠を受賞した作品だ。

本作はヨアヒム・トリアーの監督作である「テルマ」同様に"子供の超能力"をテーマに描いている。エスキルが影響を受けたものとして、"大友克洋"の作品が挙げられるのだが、「テルマ」に続きこのテーマを描くのには、こうした影響が挙げられるだろう。そして本作は「童夢」のオマージュが使われてるとの事で、日本の大友克洋ユーザーも多く本作を観るのであろうと確信した。

そして本作は子供の超能力が"どの様な時に目覚めるのか"も重視して描いている。そして"子供の人格形成の過程"による、周りの大人が決して気づく事がない静かなる"理性の崩壊"も、まるでホラー映画さながらの恐怖要素として描いているのだ。物語の主要人物である"4人の子供達(アイダ、アンナ、アイシャ、ベン)"の"うちの1人"がとても"恐ろしい人格"を持っており、物語の後半で"自分の才能を暴走"させるシーンは震えがくるほど怖かった。
そしてこの子供の人格形成の描き方は確かに大友克洋が描いたものと似ているなと感じた。「AKIRA」でもそれが描かれていたからだ。

子供時代というのはとても大切なものであり、特にその環境次第で人格への影響はかなり変わってくるのだ。子供達のうちの1人の理性と才能の暴走は、その子の"世間への恨み"が限界を迎えて起きた事だと感じる。
そしてその裏を言うなれば、その"変化に気づけない大人"も沢山いる。だけど子供同士だと気づく事もある。この能力者の一連の静かな騒動は大人が知る由もない、[3人の能力者を含む子供と闇を抱えすぎた1人の子供]の感情のぶつかり合いの様な戦争だったのかもしれない。やはり"子供の世界は残酷"だ。

子供達の演技がとてつもなく素晴らしかった。4人全てだ。エスキルは脚本家としても映画監督としても今後も目覚ましい活躍を見せるだろう。そして「ヴィクトリア」「アナザーラウンド」にも参加した、"シュトゥラ・ブラント・グロブレン"の撮影技術も凄い良かった。

まだまだ北欧勢には目を離せない様だ。
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