みりお

イノセンツのみりおのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.2
大友克洋の漫画「童夢」からインスピレーションを得て製作され、第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品。
さらにはノルウェーのアカデミー賞と呼ばれるアマンダ賞で驚異の4冠を獲得🏆
また出演した子役4人全員が、アマンダ賞で主演俳優賞にノミネートされたという衝撃作品。

これは好きすぎた!
体が震えるほど面白くて、物語にぐんぐん引き込まれて、でもまとわりつくような恐怖にとても長い時間鑑賞したかのような気怠さがあって…北欧スリラー最高!

予告編で想像していたよりかなりダーク、かつ容赦のない展開が続くけれど、全体のコンセプトはしっかりとジュブナイル。
万国共通で子供が通過する「死への興味」と「無垢な残酷さ」を経て、死に取り憑かれるのか、それとも生命の尊さを知るのか、その分かれ道が丁寧かつ繊細に描かれている。
まだほっぺがぷにぷに可愛い年頃の子供たちが、身も凍るような恐怖を体験しつつ、ひと夏を終えることでしっかりと成長していく様子には、涙を流しそうになるほど。
そしてつい自分の子供の頃を思い出してしまって、胸が熱くなること間違いなし。

そしてもう一つ印象的だったのが、これだけの残酷かつ大きな事件が起こっているにもかかわらず、大人たちは子供の行動や気持ちに全く気付いていないこと。
終盤は違和感を覚えるほどに能天気なのだが、よく考えるとそれは日常に溢れているものの延長線上にある。
自閉症の姉の世話に鬱々とした気持ちを抱えていて、傷つけたいという衝動に駆られているイーダの心に、10年共に過ごした親は気付いていない。
家庭の中で抑圧されることで人の心を失ったベンの気持ちに、周りの大人たちは気付いていない。
極めて愛情深く大事にアイシャを育てていた母でさえ、アイシャが命の危険を覚えるほど恐怖に震えていることに気付かない。
子供たちの世界は、大人が思うより複雑で難しい。
子供たちは、その複雑な感情を言葉にする術を持っていないだけなのに、言語化するのを待てずに大人は叱ってしまう。
それがどれほど理不尽でも、子供たちは自分の親を必死に愛しているのに…
その小さな掛け違いが招いた、大きな事件。
そして事件化してすらなお、それに子供達が関与していることに気付かない大人たち。
これはある種皮肉とも捉えられるくらい、滑稽な描写だった。


【ストーリー】

緑豊かな郊外の団地に引っ越してきた9歳の少女イーダ、自閉症で口のきけない姉のアナが、同じ団地に暮らすベン、アイシャと親しくなる。
ベンは手で触れることなく小さな物体を動かせる念動力、アイシャは互いに離れていてもアナと感情、思考を共有できる不思議な能力を秘めていた。
夏休み中の4人は大人の目が届かないところで、魔法のようなサイキック・パワーの強度を高めていく。
しかし、遊びだった時間は次第にエスカレートし、取り返しのつかない狂気となり<衝撃の夏休み>に姿を変えていく─ 。


【スタッフ】

*監督:エスキル・フォクト

ノルウェー出身🇳🇴
2014年『ブラインド 視線のエロス』で監督デビュー🌟
デビュー作ながらサンダンス映画祭にてプレミア上映されて外国語映画脚本賞を受賞し、その後、ベルリン国際映画祭をはじめとする国際映画祭で20以上の賞を受賞したそうです🏆
またヨアキム・トリアー監督の右腕として『テルマ』(2017)『わたしは最悪。』(2021)などの脚本を手掛け、『わたしは最悪。』ではアカデミー賞脚本賞と国際長編映画賞にノミネートされた実力の持ち主✨
本作は長編2作目で、フォクトさんの作品が日本で上映されるのは初だとのこと✨
コアなファンを生みそうな、期待大の監督さん😍
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