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イノセンツのSQURのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.0
あまりにも『童夢』を愛しすぎている…。
想像以上に『童夢』で、あの描写をそういうふうに演出にするか、といった驚きがあった(特に「気づく」描写!)。

大きなストーリーラインとしては「少年自体の孤独さや苦しみが攻撃性に転換され暴走するお話」で、ある種の定型的なお話になっている。「よくある」話だからこそ余計な言葉の説明が省かれていて、会話もかなり少なく、映像で魅せる作品になっている。
ジョジョやHUNTER×HUNTER以降の複雑化した能力バトルはもちろん私も大好きだけれど、そういった言語的な能力バトル作品が一般化した今に『童夢』的な非言語的・映像的な超能力バトルを見るというのはルネサンス的な喜びがある。

『童夢』と1番違うのは舞台が日本ではなく北欧というところで、日本の集合団地は完全に土地を開拓して"文明化"してしまうが、北欧を舞台とする今回の映画では自然の中の一部に場所を借りるようにして住宅街が建てられている。『童夢』の集合団地は姿こそ見えずともその部屋の全てに住民が息を殺して住んでいるようなじめっとした感じがあるが、本作は長期休暇中ということもあって、人の気配がない。こういった条件が重なり、本作の住宅地は"異界"といった趣が強調されている。
つまり、ロケーションがまじで最高ということ。
北欧というロケーションによって展開されるソリッドな空気の中で静かに進行する『童夢』は、本家『童夢』とはまた違った味わいがある。

良い映画だった。ぜひ映画館で観てほしい。
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