ハル

イノセンツのハルのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
3.8
ノーマークだったが、TLの高評価ぶりを見て気になり鑑賞。

フォロイーさんから事前に教えてもらった通り、大友克洋の独特な世界観にインスパイアを受けているのが深く伝わってくる。
『童夢』を読んだことはないけど、彼の作品には共通する独特な迫力があるもんね。

子供×サイコキネシス=破壊衝動。
善悪の区別も曖昧な無垢で淀んだ感情。
自身が自身に恐怖を覚え、特別な力を持ってしまった優越感と歯止めの効かない暴走に震えてしまう展開。
子供だからこその純真性は諸刃の刃なのかもしれない。

抱いた思いは“ぼくだってこうなるかも”だった。
例えば誰にも気づかれず人を傷つける能力があるとして、絶対に使わないと誓える人がどれだけいるのだろうか?
言ってみれば、Lのいない世界でデスノート無双ができる夜神月。
ただ、自分なら人が簡単に殺せてしまう現実に恐ろしくなってしまい、力を封印してしまうかも。

関係性が特殊な能力によって崩壊していくくだりも現実を投影している。
飛び抜けた存在や異質な存在がクラスで浮いていくような感覚。
“超能力者同士の戦い”というほど派手なシーンは少ないが、静かなる意志のぶつかり合いは実に見ごたえがあった。
ラストの公園、一人座る少年の物悲しさ…残酷な末路が胸に突き刺さるね。

なお、今作はPG12指定。
ただ、今年劇場鑑賞した中では一番心にダメージを受けた。
『恐怖』そのものより『キツイ』描写が多く、正視に耐え難いシーンがいくつも出てくる。
猫のシーン、子供の足が折れ骨が飛び出るシーン、ヘビのシーン。
ヘビのシーンでは僕が『ビクっ!』って仰け反った横で、同列に座っていた男性も同じ様になっていたのが以心伝心でちょっと面白かった(後列の人達から、あの二人はビビリだな…と思われてたかも)

前述した通り、イメージを掴むなら『童夢』を知っていれば話は早いが、知らない人が多いと思う。
そこで、自分なりに凄く雰囲気が似ているなぁと感じたのは『ジョーダン・ピール』作品。
「この後、絶対何かが起こる…という確信的なザワザワ感」
あのまとわりつくような薄気味悪いテイストが好きな方にはハマるはずです。
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