ツクヨミ

イノセンツのツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

イノセンツ(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

閉塞した団地で夏休みを過ごす子どもたちのイヤーなサイコキネシス模様。
"わたしは最悪。"や"テルマ"などヨアキムトリアー監督作品で脚本を手掛けたエスキルフォクトが監督で、"テルマ"と同じく子どもの超能力を描いた作品ということで興味深く見に行ってみた。
まずオープニング、クローズアップで女の子の表情をずっと映しゆっくりカメラが引いていく車内にいるシークエンスからスタート。女の子の隣にはあーっと唸り続ける障がい者っぽい女の子がいて、最初の女の子が障がい者の子を小さく抓る動きがなんかイヤーな空気を形成していた。
そして本編は田舎団地に引っ越してきた女の子たち家族を中心に、夏休みをグダーッと過ごす生活を冷ややかに描写していく。引っ越したばかりで知り合いもいない、そして両親は仕事や障がい者の姉に付きっきりで相手してくらないという小さな鬱憤が溜まる日々。そんな日々に小さな楽しみが生まれる、それは団地に住む移民系少年との出会いでそこからジュブナイル的なストーリーが始まる。
まあ本作、テレキネシス的超能力が子どもたちだけに発言するというストーリーでありながら、あくまでも田舎の燻った夏休みにフォーカスした地味さ加減がなかなかに特殊。超能力も本当に小さなものでほぼ遊びに興じて使うだけという地味さなのだ。
だがそんな題材からか地味さがジメジメしたスリラーに転換していく怖さがエグい、子ども同士の命の軽率さ的な悪戯が徐々にエスカレートしとてつもない犯罪を招いてしまう展開に戦々恐々してしまう。じわじわとヤバさが増していき取り返しのつかない展開まで発展、若気の至りで済まない移民少年のヤバさよ。
また超能力描写として感情状況を共有できるという利点をクロスカッティングで巧妙に生かす編集力がヤバい、状況を同期させ異様な光景をクロスカットさせる恐怖のモンタージュと言うべきか。あとビジュアルマッチカットとサウンドマッチカットをうまく使い映像的な快楽まで見せていくのもなかなか良かった。じわじわ怖い作品だが北欧作品特有の映像美がなかなか忘れ難い。
またラストにかけて復讐地味めサイコキネシス合戦はまあ特殊、じわじわした対決がスーッと消えいるように展開されいつのまにか終わっている一種のカッコ良さがあった。まあここまで特殊な見せ方をした超能力スリラーはなかなか無いんじゃないすかね。
ツクヨミ

ツクヨミ