雨空

イノセンツの雨空のレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
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夏季休暇中に郊外の団地へ引っ越してきた一家。両親、姉、妹の四人家族。姉のアナは後天性の自閉症で言葉は喋れなく、妹のイーダは9歳。
夏季休暇中のため団地は閑散としており子どもたちも少ない。そんな団地でイーダは男の子ベンジャミンと出会う。遊んでいくなかでベンジャミンはイーダに不思議な力をみせる。
また同じ団地に住んでいるアイシャという女の子も不思議な力を持っており、人の心が聞ける。アイシャと自閉症であるアナが知り合い共感することでアナも不思議な力が目覚め、コミュニケーションができるようになっていく。不思議な力を持った子どもたちが揃うことでお互いを高め合い力の強さはどんどん増していき……。
団地という限られた空間、日常のなかでローティーンのサイキックを描いているので派手な演出はないのだけれど、そこがすごく良かった。序盤のイーダがやる残虐、ミミズを踏んだり意思表示ができない姉をつねったり。でもその残虐さは子どもの頃に罪悪感も悪いことだという意識もないままに、ただの好奇心のままにやっていた行為そのもの。大人になった私には残虐だと思う気持ちと、どこか懐かしい気持ちにもなる不思議な感覚。そしてそれぞれの子どもたちの家庭環境を丁寧に描いていくからこそ冷酷だと思えなくて、本当にただの子どもなんだという思いが強くなる。子どもは想像力豊かであり、反面、世界が狭いことにもまた気づかせてくれる。
私は大人だから、どうしても子どもたちが思い至らない部分を想像してしまって(橋にいた男性の人生やアイシャの母親など)そこも含めて苦しくなる映画だった。
ただ映画の終わりは哀しいけれど好き。こういうのもあれだけれどかなり好きな映画だった。
雨空

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