町尾

イノセンツの町尾のレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.4
北欧ジュブナイル団地サイキックバトルホラーとでも言えばいいのだろうか。面白そうと思ってたが、期待を予想よりも超えてきた。

自閉症の姉の為にとある団地に引っ越してきた女の子が出会う近所の子供達が超能力に目覚めていくが、「大いなる力には大いなる責任が伴う」ではないけどまだまだ幼い子供達がそんなものを手に入れたら何も起こらないはずはなく…って話。子供が持っている無邪気故の残酷さをホラーとして見事に昇華したような作品。北欧というとオシャレかつ頭のおかしいホラーが最近よく出てくるイメージだが、元ネタとされる大友克洋の「童夢」は読んだことないのでどれくらい影響があるとかはよくわからないけど、どことなく日本のマンガとかホラー映画っぽさを感じる部分が結構あったように思う。超能力で戦う感じのシーンの向き合って周りに波動みたいなのが出てるのとかバトル漫画感。遠くからポツンとこっちを見てるヤツがいるとことか日本のホラーっぽいし、団地特有のなんとも言えない暗さみたいなのもそう。団地の雰囲気ってどこの国もあんな感じなのか?

メインの4人の子供達のキャラクターが立っていて、それぞれが若干家庭に問題抱えてそうな感じが危険な匂いの漂うジュブナイルって言っていいのかな。どんどん暴走していく男の子は前半の猫のシーンの辺りから割とサイコパスっぽい片鱗があるけど、もともとそうだったのか、そういう部分が能力と環境の影響で突き抜けてしまったのか、怖くもあるけど悲しい。でも地味に1番怖いのは能力がない女の子がこのままでは殺されると思って上手く誘い出した男の子を歩道橋から突き落とし殺そうとする所。善悪の判断通り越して命の危機には先にやらなければってのが超能力関係なくて怖い。そして1番カッコいいのは自閉症のお姉ちゃんでした。普段妹に世話されながら生活しててあんまり好かれてなくて時々イタズラされたりしてるのに、妹さんの危機に駆けつけてくれるシーンの強キャラ感が頼もしすぎる。暴走しまくる男の子がアイツと戦うのはやばいってなってる感じとかね。

全体を通してものすごく静かな映画なので途中で寝えへんかなとか心配してたけど、それを全然感じさせないのは良かった。最終決戦もこんなに静かで熱い戦いあるかって名シーンで、直接的な攻撃とかダメージ描写より、泣き出す赤ちゃんとか戦いに団地中の子供達だけが気づいき出すのとか間接的な描写で戦いを表現してて上手いしなんだか中2心をくすぐられる。最後ってあれ元気玉みたいな感じなのかな?そういった点でバトル漫画的に謎にカッコいい作品ながら、一連の人死とか怪現象に関して大人達が気づかない所で行われている点とかものすごく怖いし残酷で重い作品でもあるので一筋縄ではいかない良作でした。
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