このレビューはネタバレを含みます
監督がインタビューで明言している通り、大友克洋の漫画『童夢』にインスピレーションを受けた映画。舞台の団地、子供が超能力を使うといった基本設定のみならず、ほぼそのまんまなシーンもあります。ただし、決して粗悪なパロディなどではなく、ホラーテイストを強めつつ独自の視点を持っているのがポイント。
本作で何よりも素晴らしいと感じたのは、徹底して「子供の世界」にフォーカスしているところ。子供ならではの残酷さや精神的不安定さを丁寧に描き、むき出しの感情表現に圧倒される。
さらに、作中では超能力はおろか一連の事件があったことすら明るみになっていない。ここが『童夢』と最も異なる点であり、知られざる脅威が日常に潜む緊迫感を引き立てている。終盤の静かな対決シーンも、『童夢』のオマージュではあるが、神秘性を保つという面において、むしろ本作の方が大きな意義があると捉えられる。
ショッキングな表現を含むので人を選ぶ作品ではあるが、脚本、演出、演技のどれをとっても素晴らしい傑作。
