KEKEKE

イノセンツのKEKEKEのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
5.0
- こう思うことって結構稀なんだけど、なぜもっと早く、なぜ劇場に足を運んで観なかったのかと後悔した、続けて2回観て2、3日ずっとこの作品のことを考えた
- アナとアイシャの関係を羨むあまり劇中のあらゆるシーンで涙を流した、2人がドアノブを挟んで向き合うシーン、タイヤのブランコで再開するシーン、倉庫の隙間で意思を疎通させるシーン、ベンの悪意が向けられるシーン、報復のラストシーン
- 境遇は違えど4人の子供たちは各々の小さな身体に確かな熱を湛えていて、しかしそれを使うためのガイドラインをまだ持ち合わせていない
- それを教えるのは周りの大人の役目だが、もしその環境を与えられなかった場合、子供たちが経験を元に肌感覚で倫理を獲得するしかない場合、取り返しのつかない間違いを犯してしまうこともあるだろう
- 純粋な悪というものがあったとして、そういう悪も真空から突然生まれる訳じゃない
- だからといってその悪に家庭環境や運や才能など、理由を紐付ければ純粋な唯一無二性を相対化してしまうことになる
- 愛を与えられなかった子供は愛の与え方がわからない、魔法は知ってるけど使い方がわからないみたいなこと
- だからこそラストはもっと違う方向で表現してほしかった
- 子供に解決できることの限界、だからこそ残酷な方法を選択するしかなかった?ホラーとして正しい帰結?親の責任を強調している?
- 子供を信じて欲しい、いやむしろ信じすぎているのか?

- これは哀れなるものたちにも共通するテーマなのだけど、生来的に持ち合わせている倫理観と、周りに教えてもらうことで獲得できる倫理観があって、「人を殺してはいけません」というのはどちらに分類されるのだろうか

- 何がここまで自分の琴線に触れるのかわからないから困惑すらしているし、せっかくありのままで完成された美しさを要素分解して理解してしまうのも烏滸がましいとは思いつつ、そうすることでこの作品がより大切なものになる気がした
- 正直言って不完全な部分も多いと思う、アイシャの母親が刺殺するシーン、なんていうかなにも回答できてない感じというか、そこにこのシーンがある必然性を感じられなかった
- 純なものを恐怖の対象として描くことはままあることだが、与える愛と与えられる愛、与えられない愛、気づく愛、その相互関係みたいなものを捻りながらも千切らず、神秘的なバランスで混成している
- ゴア描写無しのホラー
- 単純な成長物語ではなく、次女がとある倫理を獲得するだけみたいなのもいい
- 子供の時に使えていた魔法みたいなものを映像化するのって多くの人間の夢なんじゃないだろうか
- 詩や小説、音楽、映像で試みようとしている作品はたくさんあるけど
- もし自分が映画を撮るとしたら子供にしか見えない世界を描きたいと昔から思っていて、この映画は自分の理想に限りなく近い世界観を作るのに成功していた
- まさかそれをホラーで実現できるとは思ってなかったけど
- 音楽が千と千尋っぽい?
- 自分が映画に求める最も重要な要素のひとつにイノセンスがあるなとようやく気づいた
- 換骨奪胎とはこのことで、個人的には童夢のコアとなるテーマを、社会性を帯びた、そしてよりピュアでプリミティブな感覚を添加できていると感じる
- 排除の倫理
- コモンセンス
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