三樹夫

イノセンツの三樹夫のレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
3.7
『童夢』にインスパイアされたというか、壁にグシャがないぐらいで結構まんま『童夢』だった。まず団地が舞台というのでこれで『童夢』のどの字は満たしている。『童夢』は兎にも角にも団地で、団地じゃない『童夢』なんて牛肉のないすき焼きみたいなもんというぐらい『童夢』においては団地が重要。この団地の中で一緒に4人遊んでいる子供の内3人が超能力に目覚めていた。そのうち1人が他者への加害性を発揮し超能力で直接危害を加えたり人を操って人を殺したりし、最後のブランコも『童夢』やってんなぁ~となる。悦子とジジイを子供4人の中に散りばめており、また新機軸としてまるで鳳凰幻魔拳という超能力で操られる側が見る視点もある。
『童夢』は子供の純粋な残酷さというか、特に他意なく蟻とかを殺す感じがたまたま超能力によりえらいことになってしまっていたが、妹が姉を疎ましく思っていたり他の子供に姉を見られるのを嫌がったりなど、この映画では『童夢』に比べて子供がちょっと成長しているという感じはあるが、それでも子供の世界というので大人は完全に蚊帳の外になっている。

劇中の負傷がどれも身に覚えのある痛さのやつなので、現実感のある痛さがあるため、観ていて本当に痛みを感じる。演出がしっかりしており、例えば嫌々姉と外で遊ぶ妹のシーンで、団地の子供がこっちを見ているカットの後に妹の嫌そうな表情を見せることで、姉のことを他の子供に見られたくないんだなというのが台詞なしでしっかり分かる。しっかりした演出力による現実感のある痛み描写は、負傷の度合いとしては高くないのだが、とにかく本当に痛そうに感じる。
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