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イノセンツのkitoのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.0
怖いなあ、怖いなあ、とずっと呟きながら観た。

「ミッドサマー」「LAMB/ラム」に続く北欧サイキックホラーという宣伝コピー、子供たちが主役でタイトルが「無垢な、無邪気な人」とか、もうやっちまうぞフラグ⁈がちぎれそうなくらいはためいている。「三つ星の怖さ」が期待され、実際その通りだった。

監督自ら大友克洋の漫画「童夢」からインスピレーションを得たと公言している。「童夢」は未読だけれど「AKIRA」は漫画も読んだし、アニメ映画版も観た。いずれも無邪気な子供が超能力を持つというコンセプトで本作もその類。

まるでリゾート地のような環境に建つオシャレな外観の団地が舞台。団地というだけで、いろいろな住人が集まり、絶えず大小のいざこざが起こりやすいトラブル最適スポット⁈

私も幼少期、団地住まいだった。しかも、大きな団地に隣接する団地様式の社宅だった。幼稚園前からやんちゃ盛りの小学生まで住んでいて、今思うと親にもあれやこれや迷惑をかけたなあと思うーーだって、無邪気なお年頃だったからね。

昭和の団地というのは大体は似たような所得で似たような家庭構成の中産階級が集っていた。現代では団地は減る一方だけど巨大マンションが替わりとなり、タワマンのように階層毎、家庭事情が異なる住人が混在し、当然トラブルも昔よりも起こりやすい。

本作ではさらに欧米で何かと物議を醸している移民問題も暗示されている。主役たち三家族のうちふた家族は明らかに移民家系だし、主役姉妹の姉は自閉症という難しい問題を抱えている。

子供というのはまだ人間として出来上がっておらず、社会生活のルールなども学んでなく、とにかく後先考えずに行動してしまう。劇中で蟻塚を破壊してキャッキャ言ってる様子は、似たような思い出がたいがい誰にでもあると思う。

だいたいはそこで止まって、普通に成長していくものだけど、本作では小動物を虐待する問題行動まで発展する。そうなるとサイキックパワーがあろうがなかろうが、ケアなり治療なりの対応が必要だと思う。

本作は大人がほとんど関わらず、もっぱら四人の子供だけで事件が始まり、終わっていく。子供のサイキックものは珍しくないけれど、本作はその描き方が独特で、その醸し出す不気味な雰囲気は観るのにエネルギーを要する。配信のレンタル時間はまだ1日あるのだけど再見はパスかなぁ、、、
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