ククレ

イノセンツのククレのネタバレレビュー・内容・結末

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

大友克洋の「童夢」がベースにあるとのことで、とても期待していたノルウェーのサイキック映画。

それよりも、「自閉症」やその家族の描写がリアルで、「障がい」がテーマの映画としても面白かった。

でも、猫が惨殺されるシーンなんかもあるし、かなり残酷やで…。サスペンスホラーとして完成度は高くてとても良かったけど…これから観る人は要注意です…。

以下はネタバレ…







団地に住んでいる子ども達が超能力を発揮して…という展開は「童夢」似てるんやけど、派手なバトルはない。とても静かに淡々と恐怖が重なっていくストーリー!抑えた演出がとても上手い。怖い!

子役たちの演技も自然で素晴らしい。特にアナ!視線や表情の変化がとても上手い。「自閉症」特有の仕草なんかも本当によく表現されてると思う。

「自閉症」のアナと妹イーダの関係がとてもリアル。冒頭から、イーダがアナをつねったりしてるやん。姉ばかりみている両親への不満や寂しさがよくわかる。いわゆる「きょうだい児(嫌いな言葉)」の苦しさを描いてる。

白斑のあるアイシャは友達がおらず、母は情緒不安定。アイシャは人形遊びをする感覚でアナと遊んでるうちに、何らかの周波数が合ったんやな。アイシャがアナと心を通わせていくのを見ているイーダのなんとも言えない表情が良かったなぁ。嫉妬や苛立ちもあったんやないかな?

ベンも母からネグレクトされてるよな。母を殺したのに「ママ〜」と母に甘えて泣く姿がとても悲しかった。衝動を抑えられなくなって、ダークサイドに堕ちてしまう。大きな目が次第に狂気をはらんでくる…。「AKIRA」の鉄雄みたいやな。

アナが、アイシャに操られるようにして発語が出るシーンがとても興味深かった。母親は、急に話しだしたアナを見て泣き崩れる…。父親も「パパ」と言われて夫婦で歓喜する。本当にこういうことがあるんです。大抵は意味のある会話は難しいんやけど、それでも親は相当に嬉しいはず。でも、結局また元に戻ってしまうアナ…両親に感情移入して観てたからメッチャ苦しかったわ…。

アナに「パパ」と言わせたアイシャにはパパがいないんやね…。かなり賢いと思うし安定してるけど、母親からみたら難しい子どもなのかも。ベンに操られた母親が見た幻覚はアイシャ。つまり母親はアイシャが怖かったんやろうな。悲惨な展開…。

クライマックス、団地の公園の「バトル」が面白かった。静かなにらみ合い…。沸き立つ水面や地面…!ベランダからたくさんの子どもらが見つめてたけど、もしかしたらあの子達も…?実は、あの団地自体に「何らかのエネルギー」があって、たくさんの子どもが「覚醒」してたのかもな。アナを媒体にしてたくさんの「超能力児」のパワーを増幅させたからベンに勝てたのかも?

ラスト、アナが「せんせい(懐かしいおもちゃ)」に何か書こうとしたところで終わる。すごい余韻の残るエンディング…。きっとアナには何らかの「成長」があったやろうし、イーダもアナを支えていくんやろうな…。
これから、あの「超能力児だらけの団地」はどうなることやら…。恐ろしいな。
ククレ

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