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道化師の夜の一人旅のレビュー・感想・評価

道化師の夜(1953年製作の映画)
4.0
イングマール・ベルイマン監督作。

スウェーデンの巨匠:イングマール・ベルイマンがキャリア初期に撮った人間ドラマの佳作で、サーカス一座の団長を務める老境の男とその愛人の人生の彷徨を見つめています。

巡業サーカスの団長を務めている老境の男:アルベルトとその愛人で若い曲馬師:アンナの関係性を軸にした人間ドラマで、貧しい暮らしに嫌気が差し別れた妻と人生の再出発を図ろうとするも次第に自暴自棄に陥っていくアルベルトと、アルベルトに愛想が尽きかけ気障な俳優からの誘惑に応じてしまうアンナ、二人それぞれの現状からの脱却に向けたもがきと行く末を描いています。

二人それぞれの現実と理想の対比の中に、ままならない人生の本質と不遇な現状に屈することなく前を向いて生きていこうと決意する人間の強さ(雑草魂)を感じ入らせてくれる普遍性に満ちた辛口な人間ドラマとなっていますし、ベルイマン作品と縁の深い名カメラマン:スヴェン・ニクヴィストによる陰影の利いたモノクロの映像美も全編に冴え渡っています。

巡業サーカスで生計を立てる貧しい芸人たちの哀歓の日々を悲哀的に見つめた“バックステージ+恋愛ドラマ”で、主演のオーケ・グレンベルイと相手役のハリエット・アンデルセンが不器用に生きる芸人男女を妙演しています。
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