マヒロ

道化師の夜のマヒロのレビュー・感想・評価

道化師の夜(1953年製作の映画)
3.0
巡業サーカス団の団長アルベルトは、安定しない今の暮らしに嫌気が差しており妻のいる家に帰ることを考えていた。また、彼と愛人関係にあるサーカス団員のアンナは、妻の事を考え自分から心が離れているアルベルトに対する当てつけのようによそのサーカス団の若い男と浮気をする。お互い今の状況を変えようと試みる二人だったが、現実は厳しくそう上手く事は運ばず……というお話。

いかにもベルイマンらしい厭世観溢れる作品で、年老いて何事も上手いこと行かなくなってきた男と、そんな男から離れられずに関係を続けてしまう女が、何とかしようともがくが結局何ともならない……という非常にしみったれた映画。映画におけるサーカスははぐれもの達の拠り所みたいな暖かい場所として描かれることが多いけど、今作では完全に掃き溜めみたいなどうしようもない所として描いている無情さが良い。
「老い」が一つのテーマになっているところは後の『野いちご』に通じるものがあるが、冒頭に悪夢的なシークエンスがあるのも似ている。本筋とはあまり関係ない、ある道化師夫婦の話なんだけど、これまたなかなか救いのない話で、他のパートとは違う異様に白飛びした画面とサイレント映画的な動きだけで見せる演技がやたらと不気味でインパクトがあった。

鏡を使った独創的なカメラワークなども面白いが、全体的にベソベソし過ぎてる感じがしてあんまり楽しめはしなかったかな。『第七の封印』とかが撮られる前の過渡期の頃の作品で、その布石みたいなものが明らかに感じられる辺りは興味深くはあった。

(2022.226)
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