木蘭

パラレル・マザーズの木蘭のネタバレレビュー・内容・結末

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
1.9

このレビューはネタバレを含みます

 つらい現実も嘘や秘密で覆い隠してはいけない・・・という話を隠れ蓑にして、血統主義を唱える醜悪な話では?

 子供の取り違えという悲劇を軸に、内戦の悲劇を掘り起こし記録する話を語りながら・・・そこに様々な要素を「そんな事まで!?」というくらい詰め込むのだが、詰め込んだだけで話が全然膨らまないし深化もしない。
 内戦の虐殺事件に対する話も、物語に寄与しないし、描き方も説教臭くて結果的に安っぽい話になってしまっている。
 少しずつ不満が高まっている中で、ヒロインが赤ん坊の秘密を告白するクライマックスに至って、堪忍袋の緒が切れた。

 いやね、生物学的な母親だとしても、親権とか民事法とかいろいろあるじゃん。他人の家で育てられていた子供を、ハイ持っていきます、とはいかないだろ!
 ヒロインも疑問を感じながらも、自分の子供として育ててきたんじゃないの?それがハイどうぞ、と渡せるわけないだろ?相手だって、こっちが自分の娘でした、ハイ、いただきます・・・とはいかんだろう。死んでしまった育ての娘の存在って、彼女にとっては何だったのだろうか?
 この若い母親、死んだ娘が使っていた物を簡単に譲ろうとして「まだ匂いが残っているかも。」と言われてキョトンとしたり、あんまり執着なさそうで怖い。
 この二人の母親を見ていると、赤ん坊を物扱いしているようにしか見えないんだよ・・・。

 作品の中で終始重要視されるのが、DNAを代表とした生物学的な血統なんだよな・・・父親とのつながりは思い出や物なんだが、母親とのつながりは血脈なんだよ。
 若い母親がヒロインに近づいたり、他人の娘のベビーシッターを気軽に出来てしまうのも、死んだ娘にあまり執着をしていないのも、生物学的なつながりのある実子の存在に引き寄せられているといいたいのだろうか?
 人間、受け継いでいくのは、つながっていくのは血だけでは無いだろ?というのは人類が育んだ文明では?生物学的血脈至上主義の行きついた先がナチだっただろ?

 母性は本能では無く、育まれるもの・・・という視点の欠如が恐ろしい。
木蘭

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