Ryoma

パラレル・マザーズのRyomaのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
4.3
冒頭からアルモドバル節炸裂の小気味良いバイオリンの音色が心地よく、ペネロペクルス演じるジョニスが着ている紫紺がかったバイオレット色のセーターが目を引く。その他、彼女のスマホやバッグ👜、部屋に飾られた花💐やフルーツ🥭、クッション、額縁🖼などあらゆるインテリアで“赤“が取り入れられていて、それだけでも一種の視覚で楽しむお洒落映画として成り立っていて昇華されているところが凄い。無意識に赤を探している自分がいることに気付いた😲病室のピスタチオ、山吹色のコントラストが見事な壁紙も素敵。病院の壁紙があんなに派手なのってなんか新鮮だな〜。どうしても気持ちが落ち込みがちな病院でもあんなに明るい色味を目にすれば僅かながら元気になれそうな気がする。
突如始まる情熱的な❤️‍🔥性描写はお国柄なのか監督の作品の気質なのかはわからないけど、アルモドバル作品ではもうお馴染み。愛の深さが窺えて、そういう要素も彼の作品に至っては必要不可欠な要素になりつつあるようにも感じた。
女性の芯の強さ、母の愛情を感じるのとな裏腹に、男性の身勝手さ、自己中心さを大いに感じる。様々な意見はあるだうけれど、女性は一度授かった生命は産みたいと考える人も多いと思う。一方、すべての人ではないにしろ、男性は、自分が産まないからなのか、本当に自分勝手にしか考えない無責任な人もいて…相手への想いやりに欠ける男性に憤りを感じてしまった。男性は、“俺に似てないから他の男の子供なのでは?“とか“子供は今じゃなくてもいいのでは?“など、いざ子供が出来たらまごまごしてそんな無責任なことを言ったりする姿に、男性の無力さや不甲斐なさが鮮明に浮き彫りにされていて、相手を想いやる大切さを強く痛感した。
ストーリー的には、女性や母の愛を謳ったヒューマンドラマと思いきや、サスペンス要素が徐々に強く克明になっていく構成はワクワクしながら楽しめたし、その中に社会派的要素が含まれていたり、オシャレさがこれでもかと詰め込まれているのは純粋に凄いなと。ある事実が明るみになった時の感情は、憎悪よりも哀しみや切なさ、やるせなさが勝っていてやりきれないけれど、いかなる悔恨をも乗り越えて生きていくことの大切さを学んだ。その事象があったからこそ、2人の絆がより深く強くなり、彼女たち自身も子を想う覚悟や愛情が強くなったのだとさえ思う。たとえ、幼少期に父や母、家族と過ごした時間や思い出が朧げで曖昧で短くとも、ともに過ごした時間は確かにあるんだと。そして、たとえ本人が覚えていないとしても一緒に過ごした人の胸に記憶として克明に刻まれているんだと感じた。
劇中登場するポテト・オムレツ、スペイン風オムレツのトルティージャやカフェの風景など、スペイン🇪🇸を僅かながら満喫できた気がする。
女性の社会進出、育休からの社会復帰を謳ったフェミニズムのメッセージを感じるとともに、生命の尊さ、儚さも痛切に感じた。
痛々しくも感傷的な思いを抱かせてくれるアルモドバル作品、改めて好きだなあと感じたし、母の愛、女性の強さをより感じられる本作は他作よりいっそう好きな作品になった。
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