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パラレル・マザーズのtakaoriのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
3.8
2024年99本目

同時に出産した2人の母親の赤ん坊が、産院でたまたま取り違えられるという展開は映画でよく使われる手法で、是枝裕和の『そして父になる』なども有名だ。しかしこの映画は、それとスペインの歴史上重要なスペイン内戦の暗黒の歴史をまさに「パラレル」に提示しているのが独特である。取り違えられた2組の母子のうち、若い方の母親アナの子どもが突然死してしまい、主人公ジャニスの方に本来アナの子どもである子が残ってしまって、さあどうするか…と緊迫の展開があるかと思いきや、意外とジャニスの行動はあっさりしていて拍子抜けする。このジャニスの決心と、スペイン内戦の犠牲者の遺骨の発掘は一見無関係な別々の出来事に思えるが、「血縁」の問題と、不都合な事実を隠蔽せずにきちんと白日のもとに晒すというテーマが共通しているということか。
映画では、全編にわたって原色を多用した派手な色のコントラストが目につき、特に補色となる赤と緑の対比が多く用いられている。また、赤と黄色を組み合わせれば、これはスペイン国旗🇪🇸となる。特に、ラストの遺体が埋まっている場所にやってくるアルトゥロのスズキ・ジムニーの黄色と、アナたちが乗る同じくスズキのSクロスの赤色がこのいんしを与える。このあたりの色の組み合わせを丁寧に見ていくと面白い。壁にかけられた絵画なども、詳しくないので分からないが仕掛けがありそうだ。
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