チブ夫

The Hand of Godのチブ夫のレビュー・感想・評価

The Hand of God(2021年製作の映画)
4.4
フェリーニのアマルコルドに感銘を受けたのがちょうど4年前。また素晴らしい作品に出会えた。イタリアの大家族の団欒はやはり我々の日常とはかけ離れているけれど、そこにいる少年少女の繊細さは万国共通だ。くだらないことで笑って、裏では色んな悩みを抱えて、それを誰にも言えなくて。時にストレスに感じる家族の存在も、失って初めてその偉大さに気づく。

様々な経験を経ながら静かに成長し、やがて旅立ちの日を迎えた主人公の姿を、一家の登場人物同様、他人事のようには見つめられない自分がいた。決して恵まれた環境ではなかったかもしれないが、兄弟、親戚、色んなところに先人や恩師がいた。応援し、背中を押してくれる人がいた。中でも主人公の旅立ちに多大な影響を与えた人物が、あの陽気な密航者であったことは疑いようがない。内向的な世界に育った少年に、自由に生きる姿を見せつけた男。彼との最後の会話から、終幕のシーンにかけ、郷愁と決意の入り混じった表情を見せる主人公(作者その人)に同情を覚えてならない。同時に少し、羨ましくも感じた。

海から見た街の景色が信じられないほど美しかった。灯台なんて必要ないほどに光り輝くナポリの街。その灯は来る者、旅立つ者、それぞれの道を照らし続けるのだろう。
あらゆるカットの芸術点が高く、まさに現代版アマルコルドと評するに値する。この作品一つでNetflixサブスクの元が取れてしまった。
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