ケンタロー

死刑にいたる病のケンタローのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
3.5
雅也の父親が誰よりも怖い。不穏過ぎるんだよ、あの父親…。

主演の阿部サダヲのアノ表情、岡田健史のアノ目つき、などなど俳優陣の演技が素晴らしい。だが、個人的には雅也の父親役の鈴木卓爾こそ怪演というに相応しい演技であったように思えた。
登場シーンも限られるし、セリフだって多くはない…。

「喪中だぞ…。はしゃぐな!」
「(ビール)もらおうか…」

こんな一言二言なのだが、そこには想像を絶する圧がかかっており、とにかく怖い。特にビールを飲むシーンの無言の怖さったらありゃしないよ(;´Д`)

饒舌でコミュ力に長け、共感者たる榛村大和と、寡黙で抑圧的な支配者たる雅也の父親はストーリー展開上の効果もあって対照的に映る。

本作は榛村大和の犯行とリンクするかのように映画演出としての秩序が守られており、序盤からバカ丁寧なくらいに、匂わせと思わせぶり演出が続く。殺害に及ぶ拷問シーンもワンカット、ワンカット、きちんと順建てて過剰なまでの “ わかりやすさ ” が追求されているのが印象的だ。

まさに「わかってくれるよね?」だ…。

榛村と雅也の面会シーンは照明の明暗やアクリル板の映り込みを利用した心理描写が秀逸で、映像表現としてとても面白かった。

しかし、ストーリー上のご都合良い偶然の連続性、拘置所や面会室の設定などがエンタメ演出に振り切ってるが故に観客の感じる恐怖や没入感を削いでしまっている部分もあるのが惜しい。さながら素晴らしく良く出来た「火曜サスペンス劇場」のよう…😂

真の恐怖とは自身の想像力をおいて他にないものだと考えている。人は見たことのないモノや、先のわからないコトに対して、過去の記憶や知識、経験に基づいて恐怖や不安を自ら産み出してしまう。それはすなわち己の心の内に巣食うバケモノか、内包する闇を覗き見るようなものだ。

『ゾディアック』や『セブン』のように未解決であったり、敢えて描写しないような【わからない】【画かれない】ことの方が恐怖は増すのではないか?

そのため、榛村が語れば語るほど、事件の核心に近づけば近づくほどに、“ 物語 ” としての側面が目立ち、観客は冷静さを取り戻してしまうように思えた。

そんな中、雅也の父親は終始、得体が知れない人物で在り続けるのだ…。

人は殺さないが、妻と息子の人間性を殺し続ける何を考えているのかわからない父親。個人的には榛村よりも怖いし、嫌だ…(;´Д`)

そんな、敢えて画かない余白のある恐怖演出であったら本作はもっと怖い作品になったように思う。
『孤狼の血』シリーズが監督をそうさせているのか(?)突き抜けたエンタメ演出に対して、観客が本作に求めていたテイストの微妙なズレだけが残念で、今回も個人的には『凶悪』は超えてこなかった。

以下、メモ_φ(・_・

・黒髪清楚系ビッチとの衝動的な濡れ場は監督の性癖ですか?

・センター分けに青シャツで玉遊びさせるんじゃないよ!連想しちゃうだろ!
ラッセンが好きィ〜🎶