大道幸之丞

死刑にいたる病の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

これは和製「羊たちの沈黙」か。レクター役が阿部サダヲ。

原作者も「ハンニバル」の世界観が下敷きにあったように思えてしまう。

24人の高校生を嬲り殺しにした連続猟奇殺人犯榛村大和(阿部サダヲ)から「会いに来てください」と一通の手紙が届くところからドラマが始まる。冒頭では両親と主人公筧井雅也(岡田健史)がギクシャクしている事を表現している。

本作で感心したのは登場人物のそれぞれ幼少時をしっかり顔が似ている子役を探して充てているところだ。

24人殺したとされる1件だけが冤罪であると言われ真犯人を探す筧井雅也しかしその捜索自体自身の背景をも傷つける恐れがある。ただし榛村の面会時に見かける怪しい男性金山一輝(岩田剛典)は見るからに怪しいので「後から絡んでくるな」と予感はさせる。

———しかし、虐待された子供に自尊心がないだとかロジカルな部分はどうだろう。かなり調査をした上で小説に落とし込んだのだろうが、実感として「納得感」につながっているように感じないのは私だけだろうか。理屈だけ上滑りしているようにも思える。

ともかく本作品は阿部サダヲの個性が大爆発しており、むしろはまり役過ぎて「この役を引き受けなかった方がいいのでは?」と心配になるほど。
脚本がいいし、さり気なくホラーでもあるし怖い。「観て損は絶対にさせない映画」と言えよう。

面会を重ねる毎に自身の支配下に収めようと榛村大和は企むが雅也が持ち前の健気さでそれを振り切る———が、知り合い付き合い出した加納灯里(宮﨑優)も自身と同じ榛村大和の手が伸びていたとするラストは秀逸だと思う。