ペコリンゴ

世の中にたえて桜のなかりせばのペコリンゴのレビュー・感想・評価

3.9
記録。
「桜は、下を向いて咲くんです」

普段 邦画を劇場で観る事は稀なのですが、たまたま時間があって気分が向いた事で出会えた、なかなかどうして良い映画。

学校へも行かず終活アドバイザーのバイトをしてる女子高生の咲と、同じ職場の同僚お爺ちゃん敬三、そして2人を取り巻く人々とが織りなすハートフルなヒューマンドラマです。

まず何を置いても言っておきたいのが、主演の乃木坂46・岩本蓮加(れんたん)の圧倒的可愛さ。

最近の坂道グループ動向はあまり知らんのでお初だったのですが、乃木坂らしい透明感と大きく真っ直ぐな瞳がスクリーンに映えます。演技も初主演にしては上々じゃないでしょうか。

一方でもう一人の主演は先月、惜しまれながらもこの世を去った名優 宝田明。そう、本作は彼の遺作なのです。

円熟味溢れる表現力で包み込むように人柄の良い老紳士を演じる宝田、瑞々しさと今後の伸び代を感じさせる れんたん。

歳の差にして70歳のコンビが醸し出す空気感が心地よくマリアージュしています。この映画で最も気に入ったのはこの点ですね。

咲は何故不登校なのか、彼女が甲斐甲斐しく世話を焼く元教師(現ニート)南雲は何故にこのような状況に身をやつしているのか…?

前情報無しで観たんで先が気になったこの辺の種明かしは尺が短いのもあってかアッサリめ。ていうか全体的にアッサリめ。

なんなら公式のあらすじで映画の内容殆ど言っちゃってる気がしないでもない。

それでも、春らしい爽やかな感動をくれる、この季節にピッタリな作品だと思いました。

個人的には『ゴジラ』など東宝の特撮映画でよく拝見した宝田明さん。
謹んでご冥福ををお祈り致します。