磨

世の中にたえて桜のなかりせばの磨のレビュー・感想・評価

3.5
世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし
ー在原業平【古今和歌集】

[現代訳]
もしこの世に桜がなかったら、春をのどかに過ごせるだろうに


この古文の一節がタイトルの本作は「乃木坂46」の岩本蓮加と名優・宝田明が主演を務め、「桜の季節」と「終活」をテーマに描いたヒューマンドラマ。

2人が”終活アドバイザー”に扮するという設定はやや強引で、ラストも予定調和の感動作といえるモノだったけど、全く嫌味を感じないし、80分に綺麗に纏めていたのでとても見やすかった。

観賞後の気分は上々。これで満開の桜の下を通って帰れればよかったけど、4/1の公開日から1週間鑑賞が遅れた自分が悪い(笑)
東北や北海道の方は是非どうぞ(公開館少ないのが気になるけど)

岩本蓮加の演技は正直アレな部分が多かったけど、初出演で初主演と考えたら上出来だと思う。吉行和子さんや土井志央梨さんら女優の名演技のせいでアラが目立っただけです。多分。


エグゼティブ・プロデューサーでもある宝田明さんが、公開前の3/14に逝去(3/11に行われた完成披露舞台挨拶には参加)された事で違う意味で話題になってしまった映画ですが、それを抜きにしても宝田明さんの人生、芸歴、そして優しさなどが詰まった良作だったと思います。

宝田明さんといえば、ゴジラの撮影初日「主役の宝田明です」って言ったら「主役はお前じゃない、ゴジラだ!」とスタッフから叱られたというエピソードが大好き。
中国語と英語に堪能な氏らしく”personal computer”という発音と、あまりにも完璧な中国語が素晴らしい(作中の設定と同じく満州から引き揚げた経験を持ち、普段の会話に中国語が出てしまうほどらしい)


昭和の銀幕スタア。故人のご功績を偲び、心からご冥福をお祈り申し上げます。
磨