こんな瞬間を目にするために映画を観てるんですけど！！！の連続で頭がおかしくなるかと思った 初めて訪れた地方のアーケード商店街を歩くとき、またはまったく聞き慣れない方言で打ち解けきった会話がなされるのを間近で聴くとき、いまを逃したら確実に失われてしまうであろうこの瞬間をせめて1ミリも忘れたくないって願うあのぎゅっとした気持ちが惜しみなく叶っていく酩酊と、その瞬間が今まさにとめどなく失われ腐敗していく絶望とが常に一枚の皿に並んでいて食べても食べてもなくならなくて凄かった
仕事を投げ出しクワガタに熱中する土方たち、ばかでかいイオンモール建設予定地、ショッピングモールで同僚家族とばったり会うやつ、外国籍の水商売の女の子に入れこむ既婚おじさんたちのあの絶妙なきもさ、地方において何故か燦然と輝くブライダル業界、パチンコに依存してしまう人々、スピへの抵抗のない人々、カジュアルに右傾化してしまう若者…この人たちを知っているってはっきり言えるようになってから観れてよかったな、たった2年間の地方生活だったけどそれでも確かに手を浸したことのある泥水で泣けた
映画として特別胸に響いたのはヒップホップにどっぷり浸かる猛が軽度の知的障害があるらしい引きこもりの弟・ユキヒコと常に快活に自然なトーンで会話していたシーン 国籍の違い、階級の違い、言葉の違い、所属の違いとさまざまな分断が手を替え品を替え描かれ続ける本作の中で唯一はっきりと別々の岸に立ちながら手を握り合っていた関係だった それが美談で終わらないのもまた現実…ポジとネガ両方で殴られるのやっぱり最高だ
