リーマンショック直後の甲府。土方の男たちを中心に、地方都市のあてどない空虚さをひしひしと描き切る群像劇———ソフト化や配信化は一切しない映像制作集団「空族」作品。
冒頭。逆光で人の顔を真っ黒に撮ったあとに、ようやくちゃんと映ったふたりの顔色が逆光の時と変わらないぐらいの真っ黒さでちょっと笑う。ここですこし安心してた。
見る前は尖りまくってるイメージしかなかった「空族」の作品だけど、ちゃんと"伝わる"ように作られてるのがわかります。決して自己満足集団じゃない!
その証拠に167分という長時間だけど意外と飽きることなく見れてしまう。
お世辞にも編集の上手さや展開の大胆さもないし、脈絡だってあってないようなとこもあるけど、そのつらつら続いていく様が地元から離れられない人たちや地元に帰りたくない外国人たちのようで目が離せれなくなる。
演者さんたちも、上手いや下手を超えて役柄に浸透してるみたいだったしね。一般の人と触れ合っても違和感なくドキュメンタリーと劇映画の間をたゆたゆ漂うような不思議な気持ちになっていく。
出てくる人みんな主役であり脇役のような状態で、物語の軸になっていくのが土と水ていうのも鮮烈!
土と触れ合う時間の長い土方作業員が貧しいタイ人の女の子に懐かしさからどんどん溺れていってしまうのも説得力あったと思う。
ただそんな一方的な感情も幻想として叩き潰す冷たさがこの作品の魅力。
この映画に優しさなんてひとつもない。
あるのは冷たさ。そして、この冷たさをぬるま湯だと感じてしまっている人間たちの姿だ。
なんて気持ちと夜の外気温で冷え冷えになったから帰りにグラタンを食べた。それは熱すぎた。