れい

サウダーヂ デジタルリマスター版のれいのレビュー・感想・評価

3.8
新聞記事の切り抜きに、「都市生活者により理想化された地方と空洞化した現実との対比」といった趣旨の評価があったが、個人的には多層化された疎外の方が気になった。
母国からの疎外、日本からの疎外、東京からの疎外、恋愛(性愛でない)からの疎外、それらはナショナリティを問わず全ての者に襲いかかる。地方出身の友達が「東京で暮らしていくことの難しさ」を嘆いたこと、根を張る場所に生活が依存していること、この作品をきっかけに考えるべきことは沢山あるように思われる。

テクニカルなところでは、
"I lovr you""I hate you"の応答が、You : 人→金 へ移行する演出が良い。おそらくYouは様々な意味に置換可能な枠として機能している。

上記、当日の感想
以下、翌日の感想

多層化された疎外は一見すると絶望的な現実のように感じるが、そこで「何とか生きていく様」を描くことで、絶望的な現実の中で生きのびる重要性が描かれている!と書きたいところだが、実際はより絶望的な様を描いている。

具体的には、この映画で疎外された者達は女、酒、タバコ、ドラッグ、ギャンブル、ネトウヨ、スピリチュアルへと傾倒する様が描かれている。またこの映画では一切の問題が解決されない。例えば、日系ブラジル人達は失職し母国に帰り、土片は職を失い、麻薬のグローワーは警察のお世話になる、などなど。これらを鑑みて、前述の多層化された疎外を総評すると、多層化された疎外により、女、酒、タバコ、ドラッグ、ギャンブル、ネトウヨ、スピリチュアルに傾倒した者達は一切の救いが無いまま、絶望的な現実を生き長らえている、といえるであろう。あまりに救いが無いのだが、唯一のカウンターとしてHIPHOPが存在しており、作中でも鍵となる要素である。しかし、このHIPHOPすらも前述の構造に絡め取られる。それがこの映画の注視すべき点であるのかもしれない。
れい

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