こうん

サウダーヂ デジタルリマスター版のこうんのレビュー・感想・評価

4.5
超久しぶりに観てきました10周年のデジタルリマスター版「サウダーヂ」。
公開当時と、そのあと下高井戸でも観て、今回が3度目かな。
地方都市である北海道の実家に帰った時はいつもこの映画のことを思い出します。
同級生が美心会みたいになっていて頼もしいですが。

「空族」の映画は映画館でしか観られないので久しぶりの「サウダーヂ」、殊更に気合を入れてぶっこんできました。

そして10年前と同じモノを喰らって帰ってきましたね。
いや、状況は全然改善していないどころか、よりスパイラル的に“詰んでる”ので、ましてやコロナ禍によって“底”が剥き出しになっている今、ぶっ刺さりましたね。
見方を変えりゃ、笑うに笑えなくて笑っちゃうブラックコメディです。
底を底とも知らずにえっちらおっちら穴掘ってるんよ俺ら!

デジタルリマスターで音がバッキバキになっていて(たぶん)、ラストの“わがままジュリエット”のところ、暴走族の爆音が劈くようにけたたましく、より複雑なエモーションを喚起しまくっていて、10年前と同じく、理由の分からない涙を流していたりしました。

前に観た時は「どんな映画にも似ていない」と思ったし、強いて言えば「現実に超そっくり」という感想だったんですけど、改めて観ると「牯嶺街少年殺人事件」に近しいんじゃないかと思いましたけど、それは見当違いかもしれないけど、それくらいの傑作であることは疑いないっすね。

描かれていることは超シビアだしまったく救いもないし嫌な気分になるしかないんだけど、この映画の魅力のひとつでもあるキャラクターの愛らしさなんだよね。そこが面白かったしラブリーだし、翻って怖ろしくもあったりする。
田我流演じるUFO-Kのどんどんおかしくなっていく様には愛着持っていまったキャラクターである分、終盤見せるある狂気にはゾクゾクさせられます。
それから精二の奥さんは巣鴨のキャバクラを思い出させます…
あとミャオちゃんには幸せになってほしい…いまどうしてんだろ。
彼女の「チェンマイの娘」にはうっかり涙ぐんでしまった。

兎にも角にも10年経とうが何しようが相変わらず最高に面白い映画だったんだが!
最高だったのは、空族の次回作予告として上映されたサンプル映像ね。
本編に採用するかどうかわからない、ふらっと撮った映像らしいんだけど、なんかもう…映画の断片としてバキバキに決まっていて…ちょっと陶然としてしまいましたね。
機材も進化してるしドローンも使っちゃったりなんかして、チャゲ&飛鳥の「ムーン・ライト・ブルース」(おじさんだからわかってしまうのだがこのチョイス!)が流れる市街地のビルの屋上のアーバンかつ危険な雰囲気のシークエンスから、相変わらずの連中が呑気にフライフィッシングに興じる山梨山中のシークエンスから、目の栄養しか映らない!

どうなるかわからんけど次回作、はよくれ!
こうん

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