ドラミネーター

レミングたちのドラミネーターのネタバレレビュー・内容・結末

レミングたち(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「レミングが自殺する」という話が始まったとき、タイトルに使われているだけあり、本作の本質に迫るのだろうと前のめりになったが、いざ聞いてみると「実は餌をとるときに川に入る」や「人が突き落とした」など、「レミングの特異性」「レミングである意味」が全く感じられなかった。
なんのためにレミングを引用したのだろうか。本当にレミングである必要があったのだろうか。

五体満足の兄と車イスの妹を入れ替える演出がとてもよかった。
「身体の自由さ≠心の自由さ」を象徴するシーンであり、映像作品だからこその面白い表現であった。

また、自殺しようとしていた主人公(兄)が生き、あれだけイキイキとしていた大地さんがある日突然死ぬという、「生きる活力(精神的解放感?とでも言えるのか)≠生きるか死ぬか」というのもとてもよかったな。
「やはり生きたい。」
「とりあえず生きてみよう。」
そう思わされる。

大地さんの「肩肘張らずに生きろよ」的な台詞が沁みる。
生きている。ここに存在している。それだけでいいのかもしれない。

最後にバンジージャンプをしていたシーンはとても面白かった。
心理的に「死」に向かう(「死にたいと思う」など)ことはあり、もちろんそこには心の変化を伴ったり、また、心の変化をもたらしたりするが、
物理的に「死」への距離感を近づけることによって心の変化を起きるのだろうか。
もし起きるのであれば、自分がその時何を感じるのか、とても興味深い。
バンジージャンプはそう遠くないうちにしに行こう。

イトウナホさんが歌いあげた『心電図』は中島みゆきみのような力強さを感じる。

先にあげた映像表現をはじめ、蛇口から垂れる水滴が大地さんの心電図の男(余命)の隠喩に感じられたりと、映画の開始から終幕まで、本MBT映画祭において最も「映画らしい映画」であった。始まった瞬間から、空気感がシネマティックであった。