ひこくろ

無慈悲な光のひこくろのレビュー・感想・評価

無慈悲な光(2021年製作の映画)
2.9
すみません。
久しぶりにボロクソに批判します。
気分を害する方はこの先は読まないでください。


設定や世界観は十分面白くなりそうなのに、それをまったく生かせていない。
これは、制作陣が台無しにしてしまった映画だと感じた。

まず脚本があまりにも説明的。
状況や感情がすべて台詞で語られるため、物語に入っていきづらい。
冒頭のシーンだけは説明なしで描かれるので惹きつけられるが、あとはそれが嘘だったかのように、とにかく全部説明される。
原作者が脚本を務めているが、別の人にやってもらったほうがよかったんじゃないだろうか。

ただ、これはほかの映画でもよくあることなので、まあ目をつむることができなくもない。
最悪なのは、監督の実力不足のほうだ。
「これでいいだろう」「格好よさそうだ」という安易な意図が、透けて見えるようなアングルとカット割り。
普段、アングルやカット割りなんか、いい意味で印象に残ることはあっても、悪い意味で気にかかることなんてほとんどない。
それがここまで気になるのだから、相当にひどかったんだと、あらためて思う。

さらにほとんどのシーンで、フリー素材のようなBGMが流れる、という意味不明な演出が輪をかける。
特にシーンに合っているわけでもなく、必要だともまったく思えない音楽は耳障りでしかない。
この映像と音楽が邪魔をして、正直、物語は全然頭に入ってこなかった。
センスがいいとか悪いとか以前の問題で、映画を撮れるだけの力が明らかにない。
監督には「勉強し直してから来い!」と声を大にして言いたい気分だ。

それでもこの映画に価値があるとしたら、AV女優さんたちにチャンスを与えたという一点に尽きるだろう。
Vシネマでも、イロモノ系でも、裸要員でもなく、ちゃんと演技を見せられる場があるという意味は大きい。
AIKAさんに関しては、別の作品でも見てみたいと思ったし、本庄鈴さんはちゃんと演技指導を受ければ役者として化けるようにも感じた。
加藤あやのさんは舞台で栄えそうな気がする。
久留木玲さんには、これからどんどん上手くなりそうな可能性を見た。
こういう演技に対する感想は、彼女たちが生きている世界ではなかなかない。
だからこそ、こういう作品でそれを人に見せられることはとても大切なように思う。

それだけに、余計に制作陣がもっとちゃんとしなきゃいけないのに、それができてないのが本当に残念だ。
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