垂直落下式サミング

ナチス・バスターズの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ナチス・バスターズ(2020年製作の映画)
3.5
雪の積もった森みたいなところに、一組の男女が連行されてきて、尋問もそこそこに銃殺されそうになるオープニング。大して語ることもないようなシーンだけど、なんも説明せずにいきなりはじまるから、これからどうなるんだろうと、物語に引き込まれる。何かの途中を切り取ったかのような開幕がとても好き。
ハードな始まりだったから、兵隊たちが追い詰められていく切羽詰まった状況をみせてくれるのだろうと期待していたが、味方陣営の感情任せの特攻がうまくいきすぎて、ちょいヌルゲー。
数で勝っているはずのドイツ兵が油断してバコバコやられるので、両陣営ともに総力戦でぶつかって死にまくるクライマックスまでは、見せ場が盛り上がらずもどかしい。
主要人物がわりと最後の方まで生き延びすぎるから、クライマックスの死に様に手詰まり感があって残念。仲間を庇ってとか、ブチキレて特効とか、宿敵にトドメを刺しながら自分も致命傷を負うとか、最後の言葉も伝えられずに息絶えるとか、英雄的な死に様って案外バリエーション少なくて似たり寄ったりだから、それを短いスパンで人数分ザッとみせられてもあんま感動しない。中盤あたりで先にひとりふたり死なせといてくれれば、ストーリーの渋滞を抑制できたかもしれない。
小屋でのアクションシーンは、膠着状態がそこそこ長いわりに位置関係が整理されていて見やすかった。侵略者を迎え撃つ愛国の男たち、女子供を家の奥に隠しての籠城戦、伝説の戦士に助けを求める一般市民、戦時中における人の営みそのものをミニチュアサイズ化してみせているようだ。
兵士たちのくだらないおしゃべりの最中にオッサンが静かに息を引き取ったり、将校が部下の子ブタちゃんダンス(ブタとグンター)を食べ物で遊ぶなと嗜めたりと、暴力や犠牲など気高く神聖な瞬間を俗っぽく描いているのは、タランティーノ以後のパラダイムのなかに生まれてきた作品って感じ。兵隊たちは、ちゃんと母国語を喋っている。
お国柄ジョークってのは、どこの国でもあるらしい。「ロシア人はケツを蹴られなければ攻撃しない」ってのは、この時節柄皮肉がすぎる。