夜ノ砂

カラダ探しの夜ノ砂のレビュー・感想・評価

カラダ探し(2022年製作の映画)
3.0
中盤までは退屈。
リセットされる惨殺、不気味というより直接的な暴力、だんだん下がっていく不気味度…以上3つが理由。
序盤で主役・明日香(橋本環奈)が無惨に殺される。口の中に腕を突き刺され、顎が外れたように大口開けたまま絶命する。
だけど次の瞬間、同じ日の朝に時間が戻ってはい死亡が終了。
高広(眞栄田郷敦)たち仲間も赤い人に襲われ、殺されても殺されてもリセットされる“夢オチ”の大放出。
だから死ぬとか殺されるということに観る側は徐々に恐怖や緊張を感じなくなってくる。やられ方は惨いのに死の重みを感じないのはまるでゲームのよう。

そして恐怖の種も割りと簡潔で“午前0時、襲いに来るよ”と言わんばかりに校舎に出没する赤い人の少女(幼女?)とは思えない並外れた力でどっかんどっかん乱暴しまくるのでそこから逃げる。そのうち立ち向かう。バトル的な感じなので不気味さはあまりない。
さらに同じ日を繰り返しているうちに芽生えた仲間意識を通して絵に描いたような“アオハル”に転化していく“逆ホラー”ぶりに「日本映画ってこんなんでいいの?」とさえ思った。中盤までは。

「ホラー」を倒そう。という作品なのかもしれない。
このメッセージを感じたのが、暗い夜の校舎で「照明を点ける」ことを選択するシーン。ホラー映画でよくあるツッコミどころ「暗い建物の中、奥へ奥へと逃げる」にセルフツッコミをしている。明るけりゃ安全だ(笑)。

禁じ手であるはずの夢オチの多用と何が起きてもリセットされる時間ループにもそれが込められている。
明日香や高広たちは同じ日を繰り返すことで「カラダ」の探し方と赤い人のかわし方を学習し、絆を深めていく過程で自身の心の中の弱さに気づいていく。

差別やいじめがはびこる学校社会から夢のような青春へ。
悪夢を見れば悪いことが起きなくなるかのように“浄化”されていく描き方は、自分の中にある「ホラー」を乗り越えていく必要があることを示唆している。

終盤は「最後のカラダはどこだ?」と半分謎解き的な展開に加えてラスボス化け物の大捕物。何度も何度も無惨に殺されては同じ日をやり直してきた明日香たちは入念に準備して待ち構える。もう「ホラー」から逃げない。
「友情・努力・勝利」の方程式まんまだけど、エンドロールの後に明かされる真実によって青春は本当に「夢」だったんだと気の毒さが余韻となって残る。

人体が切断されたり鋭利な物体が突き刺さるといったように抑えめながらもきちっと凄惨さを描き、PG12のギリギリを攻めていて、『バイオレンスアクション』とは大違い。
橋本環奈の顔を血などで汚したのには好感持てる。初めて(だよな?)殺された環奈の顎外れの死に様は中々良いけど、欲を言えば白目剥くとかもう少し強烈なのができなかったか。
グロ描写はR15+覚悟で攻めてほしかった。『シグナル100』と足して二で割るとちょうど良い。

映像に嘘っぽさはなく、キャラの掘り下げもあってそれなりに感情移入できるが、赤い人の暴力感が目立つだけなのでもう少し背筋の凍るような恐怖感を工夫してほしかった。

それから橋本環奈はシリアスが似合うと改めて思った。孤独感や嫌悪感、恐怖感といった負の感情を顔で見せる“静”の演技がしっくりきている。暗い雰囲気がよく出ていた。
ただ、寝起きのシーンなんかは大人な顔に見えるから、最後のJK役かなあ。
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