Kawaguchi

ある男のKawaguchiのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.9
原作の平野啓一郎作品には、「分人主義」という考え方が通底音として流れています。

「個人」は、分割することの出来ない1人の人間であり、その中心には、たった一つの「本当の自分」が存在し、さまざまな仮面(ペルソナ)を使い分けて、社会生活を営むものと考えられています。これに対し、「分人」は、対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格のことです。
中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと捉えます。この考え方を「分人主義」と呼びます。
「分人主義」オフシャルサイト  プロデュースby平野啓一郎
https://dividualism.k-hirano.com/



私とはだれか?私を規定するものは何なのか? 
私の性格はどのように形作られるのか?本当の私とは何なのか?誰しもそう考えることがあるかと思います。

インターネット以降、そしてコロナ禍で加速度的に、人々が人々をカテゴライズし、『あの人はこうだ』と決めつけることが増えてきたのではないでしょうか。

「あの人はオリンピック賛成/反対」「あの人は右/左寄り」「あの人は、、、。」

このようなレッテル貼りが、コロナ禍の息苦しい世の中を作り上げました。一人の人間にはいろんな側面があり、環境や会う人、その日の天気によって性格は頻繁に入れ替わっていきます。
無理に一つの箱に入れる必要はなく、「大きく多面的にアイデンティティーを捉えること」の重要性をこの映画から感じました。

ポストコロナ禍の映画として、2020年代の空気を上手くまとめ上げてます。単純にミステリー作品としても、めっちゃ面白かったです!!!
Kawaguchi

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