健一

ある男の健一のレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.6
『有る男』   『無い男』。
『この男』 は 『どの男』?


かなり期待値 上げて劇場に足を運んだのだが、軽く越えて来ました。
本年度を代表する日本映画になるのでは?
恥ずかしながら 本作の監督 石井慶監督作を初めて観ました。
ものすごい監督さんですね!機会があれば過去作も見てみたいと思います。

オープニング 《ネタバレあり!》

安藤サクラ演じる 文房具屋を営む 理枝 が商品整理しながら泣いている。
始まってまだ数分、彼女の表情で 一粒の涙で作品に没頭してしまい 恐らく映画が終わるまで一度も 瞬き をしていないと思う。

「万引き家族」がカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した際、審査員長を務めたケイト・ブランシェットは
『サクラアンドウの涙を流すシーンに完全に魅了されてしまいました。数年後、もし私が涙を流す演技で絶賛されることがあるとしたら それは彼女の真似をしたと思って。』と発言し絶賛した。
そこ言葉に偽りは無かった。

彼女のなんとも言えない『間』『表情』『セリフ回し』。
完璧過ぎて言葉もない。
監督の手腕も素晴らしいが主要キャスト達の『冷たい』演技が緊迫感を増幅させ最高の作品に仕上げている。

なんとも悲しく切ない お話。
愛した人が『別人』だったなんて!
実話じゃないよね? 実際にあるのかな?こんな酷な話。

『未亡人』『別人』『弁護士』。
ほぼ 3人の 物語。
立場は違えど皆『さまよい人』。
答えが見つかっても、真実が分かっても 決して心の隙間は埋まらない。
3人とも。
それは『ある』意味 復讐とおなじ。
復讐を終えても 心の中は何も変わらないのと同じだ。
生きていく上で『けじめ』をつけるだけのこと。
でも このまま 不慮の事故で命を落とした人間はどうしたらいい?
世は これを 『天罰』と言うのか・・・

とにかく3人の主要キャストが圧巻の演技を披露してくれています。
それだけでも 1.900円払う価値が十分にあり。
脇を固めるキャストたちも超豪華なのだが皆 超出番が少ない。
それも逆に3人を引き立てていて ある意味 超贅沢!

『ある男』は人生に何を求めたのでしょうか?
ああいうタイプの人間は『未来に自分の血を残したくない』と思うはずなのだが、男は愛する人との間に娘を授かった。

その幼い娘の未来の責任は誰が取ればいいんだろうか・・・

『不慮の事故死』『偽りの人生を生きた人との生活』『新たな命』。
あまりにも残酷過ぎる。
映画館に行く時には 雨上がりで どんより曇っていて肌寒かった。
鑑賞が終わり 映画館を出て帰りには 汗ばむくらいの晴天。

これからを生きて行く『彼等』にも『陰り雲』が取れ
太陽を浴びて欲しい・・・



2022年11月21日 9:35〜
グランドシネマサンシャイン池袋screen 8
💺79 席
客入り 30人前後。

月曜の朝イチでこの観客数はすごいと思う。
帰りにケンタッキーで『5ピース1.000円』の期間限定セットを買って家に帰って バク食い した。😃
いい作品を見た後は お腹が空く・・・
健一

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