いよら

ある男のいよらのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.9
夫の一周忌。疎遠になっていた義兄が弔問にやってくる。そこで言われた一言。「この人、弟じゃないです」。一緒に過ごしてきた夫は誰だったのか?弁護士に依頼してそれを突き止めていくというストーリーです。

といっても、ミステリーというよりは、ヒューマンドラマの印象が強い作品。
なぜ別の人物になり変わっていたのか、犯罪者なのか、本物の「谷口大祐」はどこにいるのか、そういった謎はありますが、そこはきちんと解決されますし、そこよりも偽「谷口大祐」、通称Xさんの辿ってきた人生を知ることで、色々考えさせられる部分が多かったです。

名前を変えて、戸籍を変え、別の人物になり変わるまでしなくては生きていけないということ。そういった生きづらい世の中っていうのが問題なのかもしれないですね。
人種差別や偏見、ヘイトスピーチ。
何かを排除して、別物として扱って、それで自分の居場所を守っていたりする部分もあるのかな。
個人的にはそういったものに対する偏見っていうのはないと思ってはいるのですが、違うものとして扱ってしまう部分はあるかもしれない。例えば、犯罪者の家族とかに関しては、当人は違うって分かっていてもどこかでそういう目で見てしまうことがないとは言い切れないような気がしてしまいました。
だからこそ、そういう人たちは周りの目から逃れるために、自分が自分であったことを消してしまいたくなるのかもしれないですね。
過去の自分を消すことで前に進んで、人生を生き直すことができるってことなんですね。
過去は偽りだったとしても、その人と過ごした時間が偽りというわけではないし、そこに幸せな時間は絶対あるはずだから。


妻夫木聡の弁護士役、良かったです。はじめは淡々と仕事をこなしているだけだったのに、私生活もこの仕事のせいで影響を受けたり、そしてある男Xにきっと惹かれている部分もあったりしたんじゃないかなぁって感じてます。ラストのセリフは意味深。というか、ラストになんて答えたのかがすごく気になります。
柄本明はさすがというか、ああいった人を飲み込むような雰囲気が巧すぎです。。小馬鹿にしたような、全部見透かしているような…。ある意味飲まれちゃいそうになります。
いよら

いよら