けん

ある男のけんのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.3
監督 石川慶(愚行録)
脚本 向井康介(愚行録)

過去の自分の黒歴史なら、禊ぎを果たせば、帳消しにした気分になれるかもしれない。

でも、家族や家系といった血のコミュニティから逃げることはなかなか出来ない。差別や偏見の対象になってしまった家族からは、よっぽどのことをしなければ、脱出することは難しいんだな。

いわゆる普通の日本の家族で生きてきた人には、想像することができないことを、この映画は突きつけてくる。

ワインのシーンが印象的だったんだ。
安いワインのラベルを剥がして、高いワインのラベルを貼って売れば、高く売れる。

人は、中身を知る前に、貼られているラベルで判断されてしまう。自分に貼られているラベルを変えることができれば、中身が悪くても大概偏見を回避することができるんだよな。

そして、観客に答えを委ねたラストシーン。この映画の最初と最後に出てくる複製禁止というマグリット作の絵画作品の意図を理解して観ると、感慨深く観れると思うな。

複製は禁止。
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