亡くなった夫の戸籍は偽物だった。
差別、偏見、生い立ち、血縁...人は何をもって個であり、アイデンティティを形成するのか。そんな鋭い視点が登場人物達のバックボーンと多層的にリンクしながら、ミステリーとして実に上手く作られてる。
ネタバレしない様に気をつけて言うと...
この男は何者なのか?という、1人の男のアイデンティティを追っかけるミステリーの中で、解き明かすその中身にもアイデンティティがキーワードとして存在し、尚且つ我々側にも問題提起するその構図が、控えめに言って良く出来てる。
ドラマとしてもめちゃくちゃグッとくる。弁護士、妻、そして子供達...彼の死や、明らかになる事実が、それぞれのアイデンティティを揺らし、向き合わさせる。役者陣の貫禄の演技や、絶妙な間を持って空気ごと引き出す監督の手腕が相まって、一人一人が危うさの中で生きている。