knitami

ある男のknitamiのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

「かなしい」と「さびしい」を使い分ける語彙力のある中学生。
絞り出すような「でも、寂しいね」の彼の言い方に、親子として過ごした数年間の実感がこもっている。名前の分からないある男が、優しい父親として暮らしてきたことがよく分かる。
そして、彼が母親に気持ちを話せて、受けとめられていることに安心する。
殺人現場、しかも父親が今まさに殺したところを目撃した上に、たぶん全くケアを受けられずに一人で生きてきたある男とは違って、ちゃんと守られてる子供でよかった。
ある男が、もしも本名のままでいたら、温泉旅館の長男みたいな人はどこにでも普通にいて、「殺人犯の息子なんか」って言葉に追われ続けるのだろう。本人には何の罪もなくても。
役所の森林課の人、結婚相手とその息子、みんなに人として好かれて暮らした。ボクシングジムでも能力を評価されていた。名前と経歴は嘘でも、この人柄、ボクシング、林業、やっていることは全て本当のこと。周囲に嘘をついているのは、どちらかと言えば城戸弁護士の方では、と思えてきたところで、このエンディング。言葉で自分のことを話してはいないのに、すごく我慢してきたことも、本当の自分で生きたいことも伝わってくる演技がすごかった。
knitami

knitami