春21号

ある男の春21号のレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.5
これは、誰かになることでしか自分を生きれなかった人達の話だ。

名前とはその人の過去のフォルダみたいなもので良いものも悪いものもいっしょくたにその中に入れられてしまう。
それがその人の人格と全く関係ないというのもはっきりいうとズルい話なのだろう
でもやっぱりそれだけじゃない
きっと何気ない瞬間、行動、想い出と呼べるかどうかも怪しいそんな名付けられないものにもその人は宿るのだと思う。

個人的な過去ともリンクしてしまった本作
というかリンクしない人なんていないのでは?
個人的な事が最もクリエイティブなことでそして政治的なことなんだと本作を観て思った。

と、いうのは一方的、つまり戸籍を変えなくても良い人の目線の話で
最後のラスト
あの一通のラインを見て主人公はなにをおもったのか?
いろんな解釈があると思うが僕は変えたんだと思う。
あの刑務所で語られた彫り師の話のよう
つまり、戸籍を変えた人を追いかけてる人ももしかしたら戸籍を変えなきゃいけないかもよ?
本作の見事な点は理由をぼかし"何か"が主人公におきたとしたところ
そうする事によってバイアスが消え去り最後の主人公の行動を観客の可能性として提示される。
観ている側だった者が見られる側に
戸籍を変えなきゃ行けない人たちを観てた自分達も"何か"があればそっち側に行くかもよ?と
 
見事だ。
原作は未読ですがそれでもわかるぐらいあからさまに原作からオミットされてる部分があると思います。
でもそれがいい、空白を作る事で他人事にしない全部観客に乗っかってくる作り
感服です。
春21号

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