フレッシュ

ある男のフレッシュのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

映像の質感も良かったし、なかなか凄みのある映画だったな、という印象。
面白かった。

窪田正孝の役が、実は殺人犯の息子だったという設定は、しかし自分の感覚を改めて考えさせられることになった。
田舎町ってとにかく噂が蠢いているじゃないですか。それが恐ろしく陰湿に無邪気に。だから、あの街であの2人が近づいていく過程では遠くから来たなんか怪しい若いやつと離婚した子持ちの女がなんやらええ感じになっとるで…みたいな噂が持ち上がらないわけはなく、そういう点では冒頭があまりそこをしつこく描かず(描く必要がないからだけども)、数年経って子供もできて親ともうまくやっていけてホントに幸せそうな家族になっていて、かなりホッとした。
で、考えさせられるな…と思ったのは、窪田正孝が殺人犯の息子だということがわかった時に、自分の中で「あの女の子可哀想だな…」という思いが、否定しがたく浮かんでくるという所。
それは自分自身が殺人犯の血が繋がっている存在を忌むわけではなく、これがさっき書いたようなあの小さな田舎町の中で知れることになったら、絶対に噂になり有る事無い事いう奴もいて、陰口を叩かれたり差別されたりいじめにあったり、そういうことになるんじゃないか…と思って「可哀想だな…」と思ってしまう自分がいるという感じ。

お母さんと息子は、血のつながりがあるわけじゃないし、もしあったとしても息子は実像としての、記憶に残る父親がいるわけでそこに寄っていくことができるかもしれないし、できそうな子だなと思ったけど、あの女の子はそれを知った時どう思うのかな…と考えてしまった。ただ、あの男の子はかなり聡明な感じがしたので、そういう所なんとか上手くやってくれるんじゃないか…と願わずにはいられなかった。

自分は色んなマイノリティの人に対して、偏見は持ってはいけないと思っているし、ないとは断言できないが、だいぶない方だと思うんだが、それでも自分の中にそういう差別意識のかけらみたいなものが、ないとは言い切れないんだよな…と奥さんのお父さんお母さんとか、温泉旅館の長男とかを見ていて、こいつら嫌だな…と思うし、自分では絶対に言わないけど、しかし全くないとは言い切れないもどかしさと自分自身に対する信頼の無さみたいなものも同時に感じさせられることになった。
フレッシュ

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