とまとまと

ある男のとまとまとのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

理枝の夫だった男は、“谷口大祐”ではなかった。本名も経歴もわからない、謎の男“X”だった。

他人の名前を名乗らなければ生きていけない男たちを描いた作品。

〜以下ネタバレ
小林誠として生を受けた“X”は、父親が起こした犯罪をきっかけに、母の旧姓である「原」を名乗り、世間の目を避けようとした。ボクシングジムを辞めた誠は、戸籍ブローカーの小見浦憲男と知り合い、曾根崎義彦と戸籍を交換する。「死刑囚の息子」である過去を捨て、曾根崎義彦として、新しい人生を生き始めた。その後、家族から逃げていた男と戸籍を交換し、“谷口大祐”に成り代わった。


小見浦憲男が刑務所で語っていた「300年生きている男」何を指すのかと思っていたけど、谷口大祐のように生きていることになっている人物のことだと繋がった時、なんとも言えない感情になった。
原作の方が谷口大祐の過去や変えられないものを持つ3人(城戸・谷口・原)の共通点についても細かく描かれているとのことで、気になったので原作も読んでみたいと思った。
この作品の映画冒頭とラストに登場した奇妙な絵画は、ルネ・マグリットの作品「複製禁止」らしい。

映画のラストシーン、城戸はバーで出会った男に対し、谷口の経歴を語っていた。名前を名乗ろうとした瞬間、作品は終わった。どんな解釈もできる余白のある、余韻のある作品で心に刺さった。

相手の特徴や家庭環境等で偏見を持つべきではなく、目の前にいる1人の人間として見るべきなのだと改めて感じた。

妻夫木さんの演技、役が素晴らしかった。
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