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ある男のmayのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.7
良く出来た作品だった。
"私が愛していたあの人は、一体誰だったんだろう?"

監督石川慶、「愚行録」「蜜蜂と遠雷」も好きだった。原作平野啓一郎著を一気に読んだので、この作品がどんな風に映画化されるのか、とても楽しみだった。  

窪田正孝の役はとても難しかったと思う。
安藤サクラの演技もとても良かった💕
妻夫木聡の弁護士役が難しいか?と言えばそれ程の感じが私にはするけれど、彼は監督にとても愛されていたんだと思う。
「愚行録」でも一緒に作っていたから、また使いたい俳優さんなんだろうなぁ。


アカデミー賞最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞、最優秀主演男優賞、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀録音賞、最優秀編集賞。受賞。

愛情と過去とが絡みあって、謎を解いていくサスペンスストーリーだった。








ネタバレあります。

里江(安藤)は、次男を病気で亡くし、その治療方法の考え方で夫との関係に決定的な亀裂を生じ離婚して、地方の実家の文房具店を手伝っていた。そこに通って来る客、谷口大佑(窪田正孝)と心を通わせる様になる。
 
大佑は林業に従事し、真面目に働いていた。2人の心は寄り添い、愛しあい結婚する。大佑は里江の長男を我が子の様に可愛がり、2人の間に新しい命、花が生まれる。

幸せな生活だっただろう。大佑は里江の母親も大切に、5人家族は何の陰りもない様に思えた。

そんな中、大佑が事故で木の下敷きになり、命を落とす。
里江、長男の悠人の嘆きはいかばかりだっただろう。

お墓を何処に作るかと言う段階で、大佑が縁を切っていた兄に連絡をする。
やってきた兄は「これは弟ではない」と。




一体この人は誰だったの?



それを解決するべく、里江はかつて離婚の時にお世話になった、城戸弁護士(妻夫木聡)に夫が"何者"であったのか、調査を依頼する。

大佑の過去はとても辛いものだった。名前を変えて新しい人生を手に入れずにはいられなかっただろう。
その辛い演技を窪田正孝は、想像していたよりずっと凄い演技でやってのけた。

真相が徐々に分かり始める。戸籍の売買だ。その仲介役をやっていたのが、小見浦(柄本輝)←流石の存在感。
 
城戸の同僚に小籔千豊が演じてるけど、いつも凄ーく面白い!笑笑

私達は、親を選んで生まれる事は出来ない。

自分の血を受け入れ難く思うような親のもとに生まれたとき、その苦しみはいかばかりだろう。
鏡を見た時、親と同じ顔がそこにあったら、その辛さはいかばかりか。


鑑賞後、大佑(あえて)にとっては、里江との4年満たない結婚生活がどれほど幸せなものであったかを感じた。

「お父さんが僕にあんなに優しかったのは、きっと自分がして欲しかった事をしてくれたんだね」と悠人。
「そうかも知れないけど、お父さんは本当にあなたを可愛いかったのよ」

4年満たない生活は、大佑にとって、彼の人生にとって、全てだったのかも知れない。感動のサスペンスストーリーだった。
納得の日本アカデミー賞だった。
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