すごく面白かったです。
俳優さん達、みんな素晴らしかった。
柄本明さん、すごくハマり役でした。小籔さん、緊張感あるシーンを見事にガス抜きしてくれました。清野さん、やはり可愛らしく、清々しい演技です。
前は洋画中心で見ていたのですが、この作品みたいなのだと邦画の素晴らしさを実感しています。もう少し深く知りたくて原作をよみたくなりました。
ネタバレあり。
人生をリセットして別人としての人生を生きる。そうしないと生きていけない、そんな過酷な人生、私には想像を絶するけど、誰しも自分らしく自由に幸せに生きていっていいと思う。やるせない、なんとも言えない感情が湧いてきて、涙が溢れてきました。
「そもそも谷口大祐は、なぜ戸籍を交換したのか?」映画を観て、疑問だったけれど、それもそのはず、原作では丁寧に描かれている谷口家の描写が、映画版ではほとんどカットされていたらしいです。
谷口大祐は老舗旅館の次男として生まれ、幼いころから兄である恭一と比較されてきました。最終的には恭一が旅館を継ぐことになりましたが、さらなる困難が大祐を襲います。大祐は病気の父のため、危険が伴う臓器移植を受け入れてしまいます。家族は言葉に出して移植を強制していませんが、移植せざるを得ない“雰囲気”を出されてしまいます。この出来事をきっかけに、大祐は家に見切りをつけ、戸籍交換に挑みました。そんな話があったとは。辛すぎます。
救いは、亡くなるまでの4年弱、窪田さん演じる谷口さんは幸せだったのではないかということ。息子さんが、お父さんが死んだことはもう悲しくはないけど、寂しいって言って涙したこと。そこには、愛があり、血は繋がらなくとも、絆がありました。涙が出ました。
ストーリーは、窪田さん演じる谷口が何者なのかを追うものですが、妻夫木さん演じる弁護士、城戸の人生をも自らに問いかけるものでした。ラストのバーのシーンは観客に問いかける形ではあるけれど、おそらく谷口のふりをしていると思われます。
本作で語られていたのは「人間はがんばれば変われる」というものではなく、変えたくても変えられないものを持つ者たちの葛藤です。とても重いテーマを、考えさせられました。
よかったです。