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ある男のTのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.0
この痺れるラストは原作からの大きな改変。と言っても結論や原作の持つ魅力を変えたわけではない。原作の出来事の前後入れ替えただけで、原作の持つ要素や魅力をそのまま高めてみせた素晴らしい脚色だ。

Xとは誰なんだというミステリを舞台に日本の様々な社会問題、とりわけ人権に関する社会問題を次々に浮き彫りにする原作がまず素晴らしい。排外主義と在日コリアン、死刑、過労死、自己責任論までてんこ盛りだ。それを映画でははっきりと「人権派弁護士」と主人公のことを呼ばせることでわかりやすく説明した。

原作は城戸の心理描写が多く、妻から離れていく気持ちや、みすずに惹かれる気持ちが強く描かれるが映画はそれをオミットした。このためラスト手前の部分の印象はかはり変化している。

メジャーな日本映画でこのテーマを扱うのは珍しい気がする。こういう映画があると文化の成熟を感じます。素晴らしい。
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