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ウェディング・ハイのsomaddesignのレビュー・感想・評価

ウェディング・ハイ(2022年製作の映画)
5.0
真面目な好青年の新郎・彰人と天真爛漫な新婦・遥のカップルは2年の交際期間を経てめでたく結婚。ウェディングプランナーの中越のアドバイスの元、紆余曲折ありつつ結婚式の準備を進める。いよいよ結婚式当日、新郎新婦の紹介VTRから主賓挨拶、乾杯のご発声etc..参列者たちの予定外の行動で、式次第はどんどん伸びていってしまい……。

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興行的には苦戦も伝え聞くけど、自分にはしっかりちゃんと面白くて大満足だった٩( ᐛ )و
コロナ禍以降、電車で披露宴帰りの酔客をすっかり見かけなくなっちゃったので、久しぶりにおめでたい気分一杯の人達を見て懐かしい気分になった。


「緊張と緩和」はお笑いの基本構造。緊張を高める舞台設定といえば「葬儀」か「結婚」。「お葬式」は伊丹十三がとっくに撮っちゃったので、こっちは結婚式だ!祝い事だしお酒も入る分、緩和による笑いと思わぬトラブルも起こりがち。

参列者がみんなクセ強すぎてビビる。あんまり新郎新婦を祝う気がなくて、自分の満足のために行動してるのがエグい。なんなら新郎新婦含め、みんなが利己的でわがまま放題。いい大人が「人生一度の大行事だからね」を免罪符に、グイグイ自分のわがままを押し通そうとする姿が滑稽で、慶事の欺瞞を浮かび上がらせる。
新婦の元カレとその友人ら3バカ。自分に都合のいいことしか考えられない、相手の状況を考えられない男子が出てくるのは大九明子監督作の特徴。

ただ一人、利他的な行動を取り続けるキャラクターが、ウェディングプランナーの中越。新郎新婦の為に粉骨砕身。髪を振り乱しながら会場内を走り回る。何が彼女をそうさせるのかが今作のキモ。
彼女自身もある意味では自分の満足感のためにしてることだけど、お客さんの満足のために行動してるのもホント。今日という日を素晴らしい思い出にして欲しいと願って、汗かきべそかき走り回ってる。
なんかこう、利他的すぎないプロ意識の高さ・在り方がリアル。「そんなに他人のために純粋無垢に行動できねえよ」ってあくまで顧客とプロの関係性の中で、最大限の努力をしてみせる姿がカッコ良かった!(自分ならすぐ「無理!」って言い切ってしまう)


大九明子作品は若手芸人が本人役で登場することが多い。前作「私を食い止めて」では吉住。今作だとヒコロヒーや空気階段が本人役で登場する中、元巨匠の岡野だけ気難しい料理長役で笑った。そういえば「私を〜」でも惣菜屋さん役で出演してた気がする。すっかりクズキャラ&多重債務借金王の岡野が真面目に演技してるのを見てると「今作のギャラ、債権者にちゃんと返したかな?」っていらない心配がノイズになって映画の邪魔になってしまった。それはそれで楽しかったけど。


余談)
結婚式場見学のシーンで、同性カップルが至極当然に存在してるのが良かった。
ポリコレ配慮とかじゃなくて、ちゃんと彼らがしてる仕草が終盤に至ってちゃんと回収されるのもいい。彼らだからあり得るじゃれ合いだし。それにしても彰人と遥はなぜあの引き出物にしたんだろう?



19本目
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