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リバーランナー: 奔流をゆく者のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

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とても正直に人物を撮していて好感もてた。感動ドキュメンタリーだった。スコット・リンドグレン(50歳)は、ヒマラヤ山脈の西チベットに位置するカイラス山(6638m)から流れ落ちる渓谷の急流4本をカヤックで下った冒険家。挑戦、病、友人の死を通して、スコットの急流のような人生を赤裸々に描いている。

ラフティングから18歳でカヤックに入ったスコット。カヤックの中でも急流下りにのめりこみ、いつの間にかその第一人者と呼ばれるようになるが、自分にも他人にも厳しく激しい気性のため、仲間が離れていく。

友人がカヤックで亡くなり、仲間割れもあったが、目標としていたカイラス山の3本をチームで制覇する。その後、体調に異変を感じ、検査しても特に何もないのに、空間認識できなくなり、危険と考えカヤックから離れていく。

ある日意識を失い、野球ボール大の脳腫瘍が見つかる。脳腫瘍は手術で取りきれず、いつ大きくなるかわからない腫瘍を抱えることになった。

歳月が経ち、カヤックの映像を撮る側に回っていて、20歳年下のカヤッカーに出会い、スコットが目標にしていた4本目のヒマラヤの急流に誘われる。青年にとってスコットはカヤッカーのレジェンドだった。

負けを知らず弱みを見せたことのないスコット。まだ脳腫瘍を抱え、再び大きくなっていることがわかるが、運命を感じ、自分の弱みを若者達に話す。若者達は互いが協力しあい、スコットが仲間にしてきたことと逆の、仲間の弱みを補うことをしていてチームでの居心地の良さを感じる。

スコットが世代間の違いで得た人間関係もさることながら、川の流れを制御するのではなく、川に身を任せることで自由になったと話したことに感動した。

もちろん急流下りを長年やってきているんだから、より自然でムダのないフォームはわかっているはずだけど、カヤックに人生哲学を得て、解放されていく様子や変化が、20年以上の撮り貯めた映像や写真でよくわかる。怒鳴ってばかり、眉間に皺寄せてばかりの若気のスコット。挑戦することで緊張し、仲間より自分のことで精一杯だったスコットが、年下の彼らの中で急流(ほとんど滝)を前にしてリラックスしている。感謝の言葉を何度も述べる。

弱さと共存しているのだと、穏やかに話す姿に、極めた人の言葉があった。

私はカヤックもやっていたけど(海と湖)、急流下りやスラローム等はそれらと全く別もので、喜んで断崖絶壁の滝壺に落ちていく人びと、頭おかしい。映像の急流は、大雨の後の災害現場みたい。そんな急流がカイラス山の川には数百あったそう。

全部キケンに見えたけど、どうもいちばんキケンなのは、渦巻いていて、出られなくなるところらしい。エスキモーロールやっても起き上がれなくなり溺れる。てっきり沈して水中の岩に頭打ち脳震盪か失神で溺れるのかと思った。

長々書いてしまいましたが、迫力ある映像は清涼感ありゾクゾクします。暑い夏におすすめです。命知らずの若者達でした。
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