貧しい生活から抜け出すため、懸賞金に垂涎し連続殺人犯を追った中年男性が失踪し、それを「さがす」娘の物語です。
（プレビューも含め）前半で大筋のストーリーを見せておいて上手くミスリードを誘い、予想とは全く異なる展開を迎えます。そして「ネット犯罪」や「介護問題」から「安楽死」までの社会問題を網羅し、多少強引な演出はあるものの、力業でまとめきっています。
また物語の舞台である大阪の下町風情を出演者たちが見事に演じ、特に佐藤二朗と伊東蒼親子のコテコテのやりとりには生活水準のリアリティが生々しく表現されています。
はっきり明記されている訳ではありませんが「座間連続殺人事件」が題材なのは間違いなく、真相が明かされぬまま風化した事件にひとつの「解釈」を提唱しており、製作者側の意欲も伝わります。
充分に及第点の作品ですが、個人的にはラストシーンが気になります。「さがす」に縛られた故の着地かも知れませんが、やや美談臭さに萎えてしまいました。
見つけたけどまだ「さがす」ふりであって欲しかった。園子温ならそうしていたはずです。
